体外受精クリニック爆破で注目…米国で静かに広がる「反出生主義」とは?
カリフォルニア州の体外受精専門クリニックで大規模な爆発事件が発生し、全米に衝撃を与えました。同時にスポットが当たったのが、アメリカに静かに広がる「反出生主義」の存在です。
5月17日、カリフォルニア州パーム・スプリングスの体外受精クリニック前で、車に仕掛けられた大量の爆発物が爆発、クリニックを含む周辺の建物に大きな被害が出ました。貯蔵された卵子や胚などに損傷はありませんでしたが、車の残骸から1人の遺体が発見されました。これは爆弾を仕掛けた容疑者本人と見られています。
アメリカでこれまで起きた医療施設の爆破事件といえば、中絶クリニックをターゲットにしたものが多くの人の記憶に残っています。1970年代に中絶が合法化されて以降、中絶反対派による爆破や銃撃、放火などがたびたび起き、死者も出ています。
これまでの事件は、中絶を「胎児の殺人」と考える反対論者が過激化して起こったわけですが、今回は逆に「子供を産むための施設」に対して発生した暴力事件です。いったい何が起きているのでしょうか。
FBIが示唆しているのは、容疑者と反出生主義(Anti-Natalism)との関連です。反出生主義はSNS上で広がり、数年前から急速に注目されるようになりました。反出生主義者は「この世に生まれることが不幸の始まり」「人が増えることで地球環境を破壊する」などの観点から出産に反対しています。2019年にはインドの27歳の男性が、「自分に断りなく産んだ」両親を訴えると発言し、大きなニュースになりました。