「『黒い雨』訴訟」小山美砂著

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 1945年8月6日、原爆投下直後の広島に放射性物質を含んだ雨が降り注いだ。この「黒い雨」を浴びた人たちを被爆者として認めて救済する制度はなく、彼らは国の援護から締め出されて戦後を生きてきた。だが、1年前の夏、広島高裁の判決によってようやく救済対象が拡大し、黒い雨被爆者と認められるようになった。

 黒い雨被爆者が戦後75年以上にわたって置き去りにされてきたのは、被爆の影響を訴える声を「切り捨てる」論理があったからだという。これに疑義を訴え、被爆を巡る救済のあり方を問うた「黒い雨」訴訟の全容を伝えるノンフィクション。深刻な病を抱えながら戦後を生きてきた原告たちの実情、米国の被害軽視に追従した国の怠慢、救済者被害を巡る非科学性と不合理さを告発する。

(集英社 1056円)

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