第10話:1本の時計が人生を変えた
アイテム:ROLEX 179173G メテオライト(買取)
お客様:金美姫 様
◇ ◇ ◇
仕事に軽重を付けるつもりはない。
ただし、効率を考えることも肝要だ。
単体で1000万を超える時計を購入する客が近郊にいれば今後の展開を考慮し届ける、面識をつくる、という選択をする場合はあるが、九州からの10万円未満の注文商品を手運びで届けるという選択をすることはない。
買い取り案件も郵送がはばかられるような巨額であれば足も運ぶが、基本的には郵送により取引を完結させる。
要因は分かりかねるが注文が一時に集中することが、ままある。
クリスマス、ボーナス時期など特殊な時期でなくとも、なぜか注文が特定の日時に集中することがある。人間の不思議なバイオリズムを体感する瞬間だ。
注文が多いことはありがたいことであるが、「分散してくれたらいいのに」とも思う。
その逆で、閑古鳥が鳴く日もまたしかり。
職場で欠伸をしかけたその時、電話は鳴った。
「社長、ご無沙汰です」
声に張りがある。
(誰だろう……)
「ちょっと買い取りをお願いしたい時計があるんですよ」
すぐには思い出せず
「こちらこそ大変ご無沙汰しております」
と、つないだ。
電話の主には、私が彼を思い出せないという発想の介在は皆無なようで
「商品はエクスプローラーⅠなんですけど」
と続ける。
その口ぶりだと弊社で購入実績のある客なので、どちら様ですか?
と、尋ねることは回避したい。
「身に着けるのは、昨年買わせてもらった519のデイトナばかりでエックスワンはサイズも小さいし物足りなくなっちゃいまして」
「519」と言えばロレックスのコスモグラフデイトナ、ホワイトゴールドにレザーストラップ仕様のモデルを指す。
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