ひねくれた合理主義者には膝を打つことばかり「斜め45度の処世術」小川哲著/CEメディアハウス(選者:中川淳一郎)

公開日: 更新日:

「斜め45度の処世術」小川哲著

 著者はSF作家だというが、それらの作品を読んだことはないものの、「あなたと考え方が近いからこのエッセーは楽しめると思うよ」と言われて本書を渡された。なぜ、考え方が合う、と言われたかといえば、この著者は出版社が通常送ってくる10冊の自著献本を拒否するという。

 私もそうなのだ。自分が10冊もらってもタダであげることになるだけだ。自分用の1冊は確保したいものの、残りの9冊は買ってもらいたいではないか! だから、版元には「オレの分1冊でいいです。知り合いは買ってくれますんで。むしろ余った9冊は書評用に活用し、知り合いのメディア関係者に送ってください」と言う。

 この本を私に薦めてくれたのはこの本の版元と仕事をしている人物だが、小川氏の考えには深く共感した。そして、内容を見ると「合理主義」「無駄なことは無駄だと言い切る」といった点を徹底的に追求していることが分かるとともに、「この著者、オレの双子の弟か?」と思うほど考えが似ているのである(年齢は1973年生まれの私よりも随分若い1986年生まれ)。

 本書は身の回りの細かなことにツッコミを入れる体裁を取っているが、ことごとく膝を打つような記述が並ぶのだ。「部屋を綺麗に保つ方法は2つしかない」を紹介する。

 部屋を綺麗にするにあたってのアドバイスとしては「一度使ったものを元の位置に戻す」や「収納を上手に活用する」などがある。これを著者は「こういった誤情報が、部屋が汚い人を長年苦しめてきた」と断ずる。そこでこう続ける。

〈そもそも「一度使ったものをもとの位置に戻す」ことができないから部屋が散らかるのだ。「収納を上手に活用する」というアドバイスにいたっては、むしろ害悪と言ってもいい。散らかった部屋に住む者が「収納を上手に活用する」と、以前より部屋の状態が悪化することもある〉

 あとは書籍の表紙のA案とB案を編集者から提示された際も編集者に任せる、という記述もあった。これにも完全同意である。売れるかどうかの責任の一端をこちらに押し付けてくる行為が著者はイヤなのだろう。私も同様である。また、こちらは「書くプロ」であり、「書籍編集のプロ」ではない。だったら書籍編集のプロに任せればいいではないか。

「友人と縁を切るタイミング」など、身近なテーマが各所にまぶされており、若干のひねくれ者かつ合理主義者にとっては実に心地よいエッセーに仕上がっている。

 ★★★

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