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井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

YOTSUYA BOOKS(四谷)自社本と編集部員が選んだ谷川俊太郎から量子哲学まで幅広く1500冊

公開日: 更新日:

 四谷近くの新宿通りを歩いていて、新刊本屋さんができているのを発見。のぞいたら、15坪ほどの中に本橋信宏さんの新刊「花街アンダーグラウンド」「歌舞伎町アンダーグラウンド」をはじめ私好みのノンフィクション本多し。食や旅関係の本も、ちくま文庫、河出文庫、講談社学術文庫もしっかり並んでいてうれしくなる。

 店員さんが見当たらないので、カウンター上にあった呼び鈴を「チン」と鳴らしたら、扉の向こうから出てきた男性が、「うち、スタンダーズという出版社で、去年11月にこの本屋を始めたんです」。出版社に併設の本屋さんだと知る。

 それがきっかけで取材に伺ったらば──。

「四谷に3軒あった書店がなくなって久しいんです。町の本屋、必要じゃないですか」と、スタンダーズ株式会社社長の田中司さん、にっこり。あまり存じ上げずに失礼しましたが、スタンダーズはビジネス本やゲーム関係本などを多数出している出版社だ。

 田中さんは異業界からの社長就任だそうで、町の本屋は大変だということを百も承知で、「返本もできる、本屋の流通の仕組み、素晴らしいじゃないですか」とおっしゃる。「専属スタッフを置かず、人件費ゼロ。やっていける」とも、「レジは編集部員8人が兼任。自分が担当した本を買う人と直接に接することができ、刺激になるんですよ」とも。

 私の“目”なんて勝手なもの。元よりの自分の興味外の本に目が行ってなかったのだから。「弊社近刊のベストセラーです」と、いわく「仮店長」の河田周平さんが「ChatGPTではじめるAI株式投資」を案内してくれる。「『3歳の孫に大丈夫でしょうか』と聞いて、買っていくおじいちゃんもいますよ」と、澤田大さんが「はじめよう! マインクラフト2026」について説明してくれる。

「雨の日は10%オフ」の古書棚

 約1500冊中、約5分の1が自社本のよう。自社本以外は、編集部員がそれぞれの興味から選んでいるそうで、谷川俊太郎も量子哲学も老子も、「テキトーにゆるく(笑)」混在する。うん、いい感じ。

 面白いのは、「雨の日は10%オフ」という古書の棚。スタンダーズの社員が自分用に買い、読み終わった本を出していて、田中社長いわく「福利厚生ですよ(笑)」。もちろん多種多様な本ずらり。新刊イベントも「目標週2回」のペースで行われているって、これまた斬新だ。

◆新宿区四谷2-2-17 第22相信ビル1階/JR四ツ谷駅・地下鉄丸ノ内線・南北線四ツ谷駅から徒歩5分/基本は午前11時~午後5時(延長する日も多い)、土・日曜不定休

ウチの推し本

「10.9プロレスのいちばん熱い日 新日本プロレス対UWFインターナショナル全面戦争 30年目の真実」瑞佐富郎著 スタンダーズ・プレス刊2200円

「プロレスファンなら誰もが、東京ドームが異様な熱気に包まれた1995年10月9日を知っていると思います。その年、突如として新日本プロレスとUWFインターナショナルの一大抗争が勃発。紆余曲折を経て、団体対抗戦が史上最大の規模で行われた日なのです。まさに伝説の一大イベント。昨年10月に発行したこの本は、30年目にして書かれた迫真のノンフィクションです」(河田さん)

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