新旧集まれ!怪談本特集
「幽霊【新装版】」イーディス・ウォートン著 薗田美和子、山田晴子訳
ドラマ「ばけばけ」で小泉八雲に再びスポットライトが当てられた。その八雲も夢中になった「怪談」は時代を問わず日本人に愛され続け、今も、多くの怪談・奇談が世に送り出されている。今週はそんな怪談本を紹介する。
◇ ◇ ◇
「幽霊【新装版】」イーディス・ウォートン著 薗田美和子、山田晴子訳
「わたし」は、友人から、ブルターニュに立つ古い館「カーフォル」の購入を勧められ、ある日、近くに用事があるという彼の車に同乗してその館を見に行くことに。原野の四つ辻で降ろされ、教えられた道を進むと、堅固な館の門が現れ、その鉄門に手をかけるとなんなく開いた。散歩道を進むと瀟洒な建物が現れ、管理人を探して中庭に入ると、犬が1匹現れた。金茶色の毛の美しい犬だった。犬は周りをつかず離れずついてくる。やがて、もう1匹、さらに1匹と犬種の違う5匹もの犬に囲まれてしまう。
友人の妻によると、犬は幽霊で、1年に1度、館に現れる日があるのだという。今日がその日だったらしい。翌日、わたしは300年前にカーフォル城主を殺した罪で裁かれた妻の裁判記録を読む。(「カーフォル」)
ほかにもイタリアのヴィラ(別荘)やイングランドの由緒ある屋敷などを舞台に、20世紀初頭に活躍した米国人女性作家がつづった幽霊小説集。
(作品社 2970円)
「転居怪談~引っ越したら怖かった」川奈まり子著
「転居怪談~引っ越したら怖かった」川奈まり子著
引っ越し先で恐怖を味わった人たちの怪異体験を集めた実録怪談集。
イラストレーターの萌美は、父が自宅マンションを売ると言い出し、部屋を借りようと内見すると、壁が殴ってできたような穴だらけだった。その部屋だけ家賃が3割ほど安く、何かあったようだが、事故物件ではないという。リノベーションされたその部屋に住み始めると、奇妙なことが次々と起こる。黒髪のウィッグのようなものが床を這い、立てかけた鏡の中に入っていったり、ベッドで突然掛け布団が宙に浮いたり、雨漏りして業者を呼ぶと天井裏には水がたまっていないといわれるなど。ふと思いつき天井の隅に向かって挨拶をするようにしたら、怪奇現象は収まったが……。
ほかにも、下駄箱の奥に奇妙なお札が貼られた部屋に住み始めると、毎夜就寝中にベッドの上で何者かにぐるぐると引きずり回されたという映画照明技師の秋正さんなど。戦慄の23編を収録。
(マイクロマガジン社 1870円)
「名城怪談」田辺青蛙著 北川央監修 うめだまりこ絵
「名城怪談」田辺青蛙著 北川央監修 うめだまりこ絵
名城に伝わる怪談と謎を紹介するビジュアルブック。
江戸城は、3代将軍家光の時代に完成。時代ごとに大勢の人が関わってきた城だけに、生ぐさい話や摩訶不思議な伝承が多く残っている。
そのひとつ、城内の「宇治の間」と呼ばれる開かずの間には、天然痘で死んだはずの5代将軍綱吉が、正室の信子に殺され、その後、信子も自害したという話が伝わっている。150年後、12代将軍家慶が宇治の間近くの廊下で両手をついた黒紋付き姿の老女に声をかけると、老女が消えたという。信子に仕えた御年寄だと伝えられるこの老女を見ると、江戸城に災いが起こるとの噂があったそうだ。
ほかにも、毒を盛られ吐血した家康の次男・秀康の血が残り消えなかったという彦根城の廊下橋の羽目板や、大坂城の各所に現れる禿姿の女の子や老婆の姿をした物の怪など、全15の名城に伝わる怪談を収録。
(エクスナレッジ 2420円)
「文明怪化奇談」荒俣宏著
「文明怪化奇談」荒俣宏著
明治36年夏、「大阪毎日」の駆け出し記者・江崎は、先輩の宇田川らと大盛況の内国勧業博覧会を取材。宇田川は、東京から招いた製氷店の店主・手島と、高名な医師の高松を巨大冷蔵庫の展示に案内する。庫内の半分は冷凍室になっており、凍った魚や肉と並んで、透き通った氷に封じ込められた抜き身の刀が展示されていた。その刀を見た手島と高松の表情が凍り付く。刀の柄には碧い染み跡があった。宇田川の調べによると、氷詰めの刀は函館港を仕切る侠客の柳川熊吉の差し金で展示されたもので、明治維新の年の冬に箱館五稜郭の堀から切り出され保存されていたものらしい。
夜になると、刀の柄からどす黒い、碧い色の液体がじくじくと染み出しているのを目撃されているという。維新時に箱館にいた手島と高松は、宇田川に請われ、その刀の由来を語り始める。
明治時代の新聞記者たちが体験した奇談を仲間たちに明かすという構成で語られる怪奇小説集。
(KADOKAWA 2640円)



















