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野地秩嘉ノンフィクション作家

1957年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務などを経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュや食、芸術、文化など幅広い分野で執筆。著書に「サービスの達人たち」「サービスの天才たち」『キャンティ物語』「ビートルズを呼んだ男」などがある。「TOKYOオリンピック物語」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

<第18回>見どころは「ドス」を「銃」に持ちかえたガンアクション

公開日: 更新日:

 高倉健は「人間が本当に悲しい時、本当につらい時、言葉が出てくるでしょうか」と言っていたけれど、確かに、その通りだ。悲しいからといって、人は泣かない。悲しい時こそ、笑って自分の感情をそらす。本当の悲しみは耐えるしかない。

 主人公と一夜を共にする増毛の居酒屋「桐子」のおかみが倍賞千恵子。大晦日、札幌から帰ってきた高倉健と酒を飲んでいるうちに親しくなり、2人は寝る。居酒屋で飲んでいるシーンでは八代亜紀の「舟唄」がかかり、見ていると、つい口ずさんでしまう。長いシーンだけれど、2人とも一度のテークでOKを出したという。

 本作のなかで、もっとも印象的なのが烏丸せつこだ。増毛駅前の「風待食堂」で働くウエートレスで、ちょっと頭の足りない女の子の役を演じている。彼女の兄(根津甚八)は通り魔の容疑者として警察に追われており、居所を知るのは彼女だけだった。

 逃亡していた根津甚八が烏丸せつこに会いに来た瞬間、高倉健をはじめとする警官が殺到する。根津甚八が終着駅の途切れた線路上でダンスを踊るように歩くシーンは美しい。「駅 STATION」は絵画的なシーンが詰まったロマンチックな映画である。

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