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野地秩嘉ノンフィクション作家

1957年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務などを経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュや食、芸術、文化など幅広い分野で執筆。著書に「サービスの達人たち」「サービスの天才たち」『キャンティ物語』「ビートルズを呼んだ男」などがある。「TOKYOオリンピック物語」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

<第19回>面白い映画ではなくいかに高倉健のいい絵を撮るか

公開日: 更新日:

【網走番外地(1965年・東映)】

 この連載高倉健が出演した映画をあらためて見直して書いている。そのうちに共通点に気がついた。たとえば、彼が出ている映画では初期の作品のいくつかを除いて、ストーリー重視ではない。

 巨匠・内田吐夢が監督した「宮本武蔵」シリーズ、「飢餓海峡」では、見ているうちに物語の中に入り込み、次の展開が気になる。だが、初期の青春ドラマ、任侠シリーズ、その後の主演ものを通してストーリーが気になる映画はまずない。私たちが見ているのは高倉健のアクションであり、気が充実した演技だ。

 おそらく監督たちが気を配ったのは、面白いストーリーの映画を撮ることではなく、いかに高倉健のいい絵を撮るかではなかったか。

 そして、高倉健にいい演技をさせるために必要なのは脚本と共演者だ。物語は通俗的でもいいけれど、彼が読んで、「このシーンはいいな」というところがなくてはいけない。また、共演者は重要だ。彼が安心して演じられる相手役、彼を刺激する新たな共演者の2通りの配役が必要になってくる。

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