著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

放つ言葉の重みと軽み…演技を超えた演技女優「樹木希林」

公開日: 更新日:

 樹木希林さんが亡くなって、まもなく1週間が経つ。この間の報道の大きさに圧倒された。彼女が全く稀有な俳優だということが、広く認識されていたからだろう。美人女優として主役を張る映画やテレビの王道を歩んだ人ではない。演技の深化によって脇から主役クラスへ向かった俳優とも違う。希林スタイルとでもいうしかない独自の俳優人生が、多くの人たちを魅了したのだろう。

 若い時分からの軽妙でユーモア感覚あふれる個性派が、いつの頃か、ある独特の境地に足を踏み入れていった。ときにアドリブにも感じられる軽口や意味深長なセリフ回しが、彼女の生活空間の要所からつむぎ出されたかのようで、それが自然体にも見える演技につながった。彼女が放つ言葉の重みと軽み。演技を超えた演技ともいえる。

 その自然体が家族劇のなかで一層輝いた。是枝裕和監督の「歩いても 歩いても」(2008年)や「海よりもまだ深く」(16年)では、母として祖母として、家族の全体像をときに見守り、ときに突き放したりする。昭和を引きずる「良妻賢母」型ではないが、存在感が圧倒的なのだ。河瀬直美監督の「あん」(15年)では、産めなかった息子の姿を借金まみれの男に重ね合わせ、彼の仕事を助けることになる。「あん」は家族劇ではないが家族を求める話でもあった。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋