著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

「凪待ち」主演・香取慎吾が圧巻の演技で見せた崖っぷち男

公開日: 更新日:

 都内のシネコンで、筆者の両隣に女性の1人客が座った。映画が終わり近くなった時点で、2人のすすり泣きが聞こえてきた。続く何カ所かの場面でも、2人は涙を流しているようだった。映画のなかで、ぎりぎりに生きてきた主人公が、崖っぷちの状況に陥ったからである。

 映画は「凪(なぎ)待ち」という作品だ。競輪にのめりこみ、人生の目的が持てない、もう若くはない男。そんな主人公を香取慎吾が演じた。同居していた女の実家がある宮城・石巻に居を移す過程で競輪から足を洗う。ただ、ギャンブルの誘惑は消し難い。彼の身に次第に暗雲が垂れ込める。

 パッとしない服装、険しい顔つき。人生を下りてしまったような男の日常が続く。はじめ、救いようのないろくでなしにも見えたが全く違う。ある事件を境に、彼の本質が分かってくる。まっとうで、とても優しい男。目に見える生活と裏に隠れた内面が、どうにもちぐはぐなだけだ。

 かつての競輪仲間が犯した罪を知って突拍子もない行動に出るシーンがある。万策尽き、「(福島の原発の仕事で)除染に行く」寸前だったが、仲間を見捨てることはできなかった。彼は、その男に自分の姿を見たのだろう。香取は、この複雑な役柄を暗い表情のなかに刻みつけ、圧巻の演技であった。

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