著者のコラム一覧
太刀川正樹ジャーナリスト

1946年、東京生まれ。国際ジャーナリスト。早稲田大学教育学部英文科在学中、韓国国立ソウル大学語学研究所へ留学、韓国語を学ぶ。講談社の日本語版「ペントハウス」ニューヨーク特派員などを経験。著書・訳書に「政権交代」「平壌十五号官邸の抜け穴」「オリンピック30年」など。

満期出所まで残り2カ月で母親が死んで…葬儀の費用もなく

公開日: 更新日:

 恥ずかしい話ですが、葬儀代を払える余裕がなく、葬儀会場に覚書を書いて、満期出所後に支払う約束をしました。私は本当に親不孝な娘で、バカなことをしてきました。

 母は子供の頃には私に、「おまえの父親はおまえが3歳の時に亡くなった」と説明していました。でも墓地はどこにあるのかを聞いても教えてくれないのです。

 18歳の頃、韓国には金海金氏とか全州李氏といった族譜をまとめる親睦組織があることを知りました。そこで桂氏の会(親睦組織)に母に黙って手紙を書き、父親の消息を調べてもらいました。2カ月後に父親の居所がわかり、ソウル市内明洞の茶房で会うことになりました。

 私が茶房に入ると、入り口に近い席に座りながら私の目を追っている父親をすぐに見つけました。私たちは一緒に食事をしてから、私が誘って母親に会ってもらうことになりました。父は一瞬複雑な表情をしました。2人は会っても会話がなく、ぎこちない再会となりました。父親と別れたあと、母親はなぜ別れたのかを教えてくれました。


 実は両親が会ったのは朝鮮戦争(1950年6月25日)後の混乱期で、しばらく暮らしているうちに、父親には本妻がいることを知り、裏切られた気持ちになり、これ以上は一緒に暮らせないという気持ちになったようです。独立心が旺盛な母親は私をお腹に孕ませたまま別れました。母親の告白を聞いて、私には母親しかいない。これからは母親のために生きようと決心したのです。 (つづく)

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