「葬祭ジャーニー」アニタ・イサルスカ著、高崎拓哉訳
「葬祭ジャーニー」アニタ・イサルスカ著、高崎拓哉訳
身近な人の死は、残されたものに筆舌に尽くしがたい痛みを与える。人々は、失った人を思い、改めて生の意味を問い、追悼の行事でその痛みを和らげようとしてきた。
人は死の悲しみをどのように乗り越えてきたのか。世界中の葬送、追悼の儀式を紹介しながら、その考え方や風習に学ぶビジュアルブック。
アイルランドの弔いの儀式「ウェイク」は、キリスト教伝来のはるか前からあり、大昔の民間信仰にルーツを持つ。
カーテンを閉じ、鏡を布で覆い、時計を止め、時間と空間の感覚をなくし聖域となった家に、亡骸を横たえる。家族が不寝番をする中、弔問客はウイスキーとともに悪ふざけやちょっと不敬なゲームを楽しむという。
そして、何よりも、音楽によって悲しみを癒やす。
参加者は、専門の歌い手「バーン・フィンテ」(泣き女)に続いて泣き叫ぶことを求められる。その歌は、死が呼び覚ました、相反する強烈な感情を表現するという。
アメリカ・ニューオーリンズの「ジャズ葬」は、教会で儀式を終えた人々がパレードマスター(バンド)を先頭に墓地まで行進する。主要な参列者の後に、友人や知り合い、通りすがりの人によるセカンドライン(第2集団)が思い思いのダンスを踊りながら続く。
セカンドラインの原点は、ガンビアとセネガルの伝統舞踊で、死者の霊魂が体を離れ、先祖のもとへ帰ることを祝う葬送の儀式だったという。
ほかにも、楽しく故人を偲び、魂の転生を願うネパール・カトマンズ渓谷の祭り「ガイジャトラ」など、死者を「たたえる」行事・風習をはじめ、「しのぶ」「いたむ」「そなえる」の4視点から世界の多様な葬祭文化を紹介。
死を思うことは、生を見つめ直すことでもある。 (日経BPマーティング 3630円)



















