フィリベール監督が語る「ドキュメンタリー撮影」の極意

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「ダイレクト・シネマ」というドキュメンタリーの手法をご存じだろうか。最大の特徴はナレーションがないこと。編集作業も最小限にとどめ、時系列に沿って構成していく。過度な演出はせず、素材そのもので勝負するわけだが、ごまかしが利かないぶん被写体との関係性がより重要になる。そのダイレクト・シネマを得意とするニコラ・フィリベール監督(68)は、1日公開の最新作「人生、ただいま修行中」(ロングライド配給)でもその手腕をいかんなく発揮している。

 同作品はパリ郊外にある看護学校に通う看護師の卵たち40人、150日間の成長奮闘記で、生徒たちが手洗いに悪戦苦闘するシーンから始まる。あの人気医療ドラマのような「私、失敗しないので!」といったキャッチーなセリフや派手な演出は一切ない。カメラは生徒たちの様子を淡々と追うのだが、フィリベール監督は「まさに手洗いは看護の現場を象徴する」とこう続ける。

「フランスの医療現場では衛生管理を徹底させるため、1回の手洗いに7通りの工程を行うのだけれど、生徒たちは研修が始まってすぐ手洗いの方法を学ぶんだ。そして、何度も復習しながら体で覚えていく。看護の現場では患者の手を握ったり、背中をさすったり、抱き上げたり、手は大切な役割を担う。看護の基本である手洗いのシーンはこの作品を象徴すると思ったんだ」

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