著者のコラム一覧
てれびのスキマ 戸部田誠ライタ―

1978年生まれのテレビっ子ライター。最新著「王者の挑戦『少年ジャンプ+』の10年戦記」(集英社)、伝説のテレビ演出家・菅原正豊氏が初めて明かした番組制作の裏側と哲学をまとめた著者構成の「『深夜』の美学」(大和書房)が、それぞれ絶賛発売中!

窮屈で笑えない社会から逃げずウーマン村本はネタにする

公開日: 更新日:

 だが、村本は違っていた。この頃、AbemaTV「土曜The NIGHT」などで社会的な話題を扱っていた彼は、「政治だけじゃなくて、政治もひっくるめた世の中の空気みたいな、政治のことを言った人が話を逸らしたり、そういうところに興味がある」(メディアシンク「デイリーニュースオンライン」17年5月12日)と勉強を始め、アメリカのスタンダップコメディーに傾倒していった。

 アメリカでは当たり前のように、お笑いには社会問題などが出てくる。けれど、日本でそれを出すと逆に「笑いから逃げてる」と言われてしまうと彼は嘆く。テレビに出ないと芸人は「消えた」と言われてしまうが、自分の本業は漫才師。「だからおれはいつでもどこかのセンターマイクの前にいる」(村本大輔「note」19年12月8日)と村本は言う。

 ネタ中にも村本は「みんながどういうテンションで聞いたらいいか分からないと言われました」と明かす。その「みんな」の中に、原発や基地問題、朝鮮人差別で苦しむ人は入っていない。村本は「いつでも『みんな』の中にいない人がいて、『みんな』の中にいない人が透明人間にされて、透明人間の言葉は誰も聞かれないようになる」とネタを続けた。

 今の日本では、政治や社会問題を漫才に入れると笑いにくくなり、そんなのは漫才じゃないと言われたりもする。けれど、それこそが窮屈で笑えない社会だと、村本はセンターマイクの前で自分の考える「漫才」にこだわり続けるのだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  2. 2

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  3. 3

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  4. 4

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 5

    国民民主党・玉木代表「ミッション・コンプリート」発言が大炎上→陳謝のお粗末…「年収の壁」引き上げも減税額がショボすぎる!

  1. 6

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  2. 7

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  3. 8

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  4. 9

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  5. 10

    楽天が変えたい「18番は田中将大」の印象…マエケンに積極譲渡で“背番号ロンダリング”図る