時事芸人プチ鹿島 日刊ゲンダイ2019年「1面見出し」大賞

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 新聞を計13紙購読し、読み比べを芸の域に昇華させた時事芸人が、1年分の日刊ゲンダイの1面大見出しを総チェック。いろいろあった2019年を独自の見立てで振り返る。

 ◇  ◇  ◇

「ウッズ 廃人からの復活」(4月16日付)。いいですねえ。廃人って! インパクトがある。「安倍官邸 暗躍年表」(2月25日付)も覚えているなあ。すごくまとまってて、役立ったんですよ。普通に振り返らないぞ、という意思がいい。

 最近の桜を見る会「安倍 弁明墓穴」(11月19日付)も勢いがあります。1面記事の「中止で幕引き そうは問屋が卸さない」(11月15日付)も素晴らしい。“ゲンダイ師匠”が見えを切る痛快さがあります。

 統計不正疑惑もありましたね。覚えているのは「毎勤不正で新疑惑『数値上昇』の発端は麻生大臣の“大号令”」(1月23日付)という記事。分かりやす過ぎる見立てで、ギョッとしましたけど、約1週間後に朝日新聞が同じネタをシレッと記事にしていた。で、僕は「ゲンダイ師匠がとっくに書いていたな」と見逃さない。

 野党の指摘に基づく記事でしたが、大手紙は野党の追及を書こうとしない。野党議員の調査を逃さず、いの一番に書けるのが、今やタブロイド紙の強み。ネタ元が野党なら、単なるウワサ話じゃない。こうしたゲンダイ師匠の切り込み隊長的な役割を多くの人に知って欲しいですね。

 特に今の安倍政権は「ホントに?」ってことが、「どうやらホントだった」というケースが多い。桜を見る会なんて「反社大挙」(11月30日付)とか、「「悪徳マルチ ズブズブ」(12月3日付)など「また、またあ」ってことが、その通りになっている。

 別にタブロイド紙的に面白おかしく話を盛っているわけじゃない。大仰な見出し芸じゃないのです。「あっ! いい飛ばし気味な記事だな」と楽しむのが、タブロイド紙のたしなみ方だと思うんですけど、全然飛ばしてないじゃないかって。伝統の見出し芸が「そうだよな」と普通の正論になってしまっている。

 あえて言いますけど、桜を見る会にはここ数年の政権の“魅力”が全部、詰まっています。廃棄や公私混同とか。世の中や政治の世界がタブロイド化してきて、現実が後から見出しに追いつき、追い越している。よく考えたら、おかしなことで、間違った世界に生きている感じがします。悪い冗談、笑えない冗談の世界です。

 ゲンダイ師匠の刺激が強く、短い言葉は今のSNS文化に合っているのかも知れません。SNSってドンドン、言葉だけ強く短くなっている。トランプ米大統領のツイートがまさにそう。記事がネット配信され、ガツンと目に入ってくる見出しが、きっとタブロイド紙のたしなみを知らないリベラルな文化人にも響く。そして記事をシェアして自分のコメントを書いたりする。

 でもゲンダイ師匠の見出しは本来、一日の仕事を終えた人が見るべきもの。「お疲れさま」と、仕事帰りに塩気の多い料理を欲するように、辛口の塩分高めの言葉が求められる。発売当日に紙面を買って読むのが、タブロイド紙のたしなみ方。働いた後だから、おいしいのに、昼からゲンダイ師匠の配信記事をSNSでシェアするのは塩分濃度がキツすぎる。昼から塩辛い味付けは、健康を害しますよ。

 タブロイド紙って「また、言ってるわ」で許される超然とした立場だったのに、ゲンダイ師匠がセンターに来ている感じって「どうなの?」って思います。強い言葉がSNSにハマり、互いの極と極からの激しい言葉のぶつけ合いに利用されている節があるからです。それが続く限り、二極化は収まりません。

ヤジ将軍の川藤が4番を打たされている印象

 僕は朝日、毎日、東京を安倍スタジアムの三塁側(ビジター)と想定していますが、朝日の記事をシェアしても塩分が足りないのでしょう。ゲンダイ師匠はもともと、三塁側の「ヤジ将軍」。乱闘が起きたら真っ先に駆けつける鉄砲玉で、「今さら騒ぐ大マスコミの大罪 朝日新聞の後出しジャンケン」(11月19日付)と、三塁側がちゃんとプレーしなければ噛みつく姿勢がいいのです。

 そんな乱闘要員が、今のSNSではクリーンアップを任されてる。昔でいえば阪神の川藤選手が4番を打たされているような印象です。朝日は年俸がメチャクチャ高い選手で、7番くらいをゆっくり打って「何で、おまえが下位打線なんだよ!」とヤジられている。三塁側も相当にねじれていますね。

(聞き手=今泉恵孝/日刊ゲンダイ)

2019年 突き刺さった見出し厳選5本

①「肥溜め」のひと言で片づける。どんな言葉もかなわない。もうTシャツにしたいほど。舘ひろしさんの記事も良かった。「太平洋戦争は日本のエリートたちが犯した失敗の宝庫」と、それこそ朝日がオピニオン欄で載せるべき記事。肥溜めの横で戦争を語る混沌さがたまりません。

②どこよりも早く「名簿廃棄」を取り上げた記念碑的な見出し。「紅白ひばり頼み」もサイコー。実はNHKがAIでよみがえらせたのだけど、いつの時代にいるんだ?昭和に帰ってきたのかと一瞬、惑わせる。ゲンダイ風味の合わせ技一本。

③「神宣言」って、やっぱ面白いなあ。いつもは直球を投げてくるゲンダイ師匠が、何か皮肉を利かせた変化球で笑ってしまう見出しでしたね。

④「国辱」に「接待」と本来なら並ばない2文字を並べるワードチョイスがいい。ちょっと前なら「ゲンダイ師匠、また怒っているなあ」という反応でしたが、「その通り」と思えることにギョッとします。

横浜カジノ利権のネタは面白かった。2019年の漢字は「菅」でいい。前半は「令和おじさん」としてチヤホヤされたけど、後半はフラフラ会見や反社の定義など悪い意味で話題となり、加えてカジノ問題も抱えている。彼の失速ぶりが2019年を象徴しています。

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