中山七里氏「ドクター・デスの再臨」連載直前インタビュー

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 2015年に本紙(日刊ゲンダイ)で連載し、綾野剛と北川景子主演で実写映画化された「ドクター・デスの遺産 BLACK FILE」(11月13日公開)の続編、「ドクター・デスの再臨」の連載が、いよいよ来週月曜日(10月5日)からスタートする。今作は驚きの結末を迎えた前作から2年後を舞台に描く。著者に意気込みと読みどころを聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 物語は、女子中学生の帰宅シーンから幕を開ける。部屋にいるのは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)に罹患した母親・瑞穂だ。その夜、母親の枕元に200万円の大金が用意されていた。父親は「介護サービスへの支払いに必要と聞いた」という。翌日、下谷署にその少女から「母が安楽死を――」との電話が入る。

「冒頭にALS患者を登場させたのは、やはりこの夏、医者2人によるALS女性患者の安楽死事件があったからですね。今回の事件でALS患者がどのような生活を強いられているか改めて分かったので、描きたかった。少しでも実情が分かれば、そういう病気で苦しんでいる人の理解の助けになるかもしれませんから。実はこれまで小説で描いた事件が、嫌なことに次々と現実になっているんですよ。『ドクター・デスの遺産』で描いた安楽死、『ヒポクラテスの誓い』ではアメリカでの人種差別、『毒島刑事最後の事件』では、小説の新人賞に落選し続けた男が脅迫する……。これ以上、悪いことが現実にならないよう祈るばかりですね」

 今作は、本紙(日刊ゲンダイ)で連載された「ドクター・デスの遺産」の続編で、主人公の犬養刑事、女性刑事・明日香とのバディーは健在だ。

 前作は安楽死を請け負い、3人をあの世に送ったドクター・デスの逮捕で終わっている。

「今作は、ドクター・デスの逮捕から2年後を舞台にしています。その間、主人公の犬養刑事はシリーズ5作目に当たる『カインの傲慢』で臓器売買事件を追うのですが、違法なことをしなければ助からない命もあることを突きつけられ、精神的にヘロヘロ状態なんですね。おまけに犬養は前作でドクター・デスに刑事としての信念を木っ端みじんにされている。そんな犬養の前に、ドクター・デスの模倣犯が現れる――というのが今作の粗筋です。第1章のタイトルを〈更に受け継がれた死〉としたのは、『ドクター・デスの遺産』を書籍化した時に加筆した第5章のタイトルの流れを酌んでいるんです。つまり、まだ続いているんだよ……という私からのメッセージですね。もちろん本作だけでも独立して読めますが、前作を知っているとさらに面白く読めることは間違いありませんよ(笑い)」

 今作も前作同様、安楽死が大テーマとなっているが、前作で描かれた安楽死に関する倫理と正義とは一線を画している。

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