中村獅童はコロナ禍が生んだ“最大の好機”をものにできるか

公開日: 更新日:

 若手の中では、「義経千本桜」での、義経の染五郎と静御前の莟玉が、主役である獅童の影が薄くなるほど光っていた。逆にいえば、獅童がいまひとつ。

 獅童が歌舞伎座で古典演目の主役を務めるのは初めてで、「48歳にして夢がかなった」と語っている。ましてや顔見世での主役など夢の夢だったはずで、コロナ禍の変則的興行だからこそ実現したといえる。であればこそ、素晴らしい演技を見せて、関係者に、「こんないい役者なのに、これまでいい役を与えてこなかったのは、間違いだった」と認めさせなければならないのだが、残念ながら、そうなっていない。

 狐忠信は、軽業的な動きがある役だが、体にキレがなく、重い。セリフも音量のコントロールができていない。指導してくれる人がいないのだろうか。染五郎は、父や祖父から離れての出演で、しかも大役なのに、動じることなく、凜々しい。莟玉も一般家庭出身だが、梅玉のもとで大役を重ねているので、安定している。

 獅童は、歌舞伎座に出るときも新作でキワモノ的な笑いを取る役が多く、古典の大役の機会が少なかった。後ろ盾となる大幹部がなく、門閥を重視する座組に入れなかったためだ。これは彼自身の責任ではないが、今回の絶好の機会をものにできないのは本人の責任だ。もっとも、私が見たのは4日目なので、千秋楽までには良くなっているかもしれない。

(作家・中川右介)

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    キンプリファンには“悪夢の7月”…永瀬廉&髙橋海人「ダブル熱愛報道」で心配な大量ファン離れ

  2. 2

    田中将大の日米通算200勝“足踏み”に巨人の営業がほくそ笑むワケ

  3. 3

    ドジャース大谷翔平 本塁打王争いでシュワーバーより“3倍不利”な数字

  4. 4

    桑田佳祐も呆れた行状を知っていた? 思い出されるトラブルメーカーぶりと“長渕ソング騒動”

  5. 5

    《浜辺美波がどけよ》日テレ「24時間テレビ」永瀬廉が国技館に現れたのは番組終盤でモヤモヤの声

  1. 6

    キンプリ永瀬廉と熱愛報道で浜辺美波の最新写真集どうなる? NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の行方も左右

  2. 7

    方向性が定まっていない横山裕にとって「24時間マラソン」は、今後を占う大事な仕事だ

  3. 8

    「ポスト石破」最右翼の小泉農相“進次郎構文”また炸裂の不安…NHK番組で珍回答連発

  4. 9

    巨人に漂う不穏な空気…杉内投手チーフコーチの「苦言連発」「選手吊るし上げ」が波紋広げる

  5. 10

    正捕手・甲斐拓也の骨折離脱が巨人に「プラス」の根拠とは???