大阪万博ロス民から熱い視線も…地元民が「横浜花博」に“不安”を覚える3つの理由
いまだに冷めない大阪万博の熱
去る10月13日に大好評のまま閉幕したEXPO 2025 大阪・関西万博。マスコットキャラクターのミャクミャクはまさに今年の顔となり、流行語大賞にもノミネートされました。
閉幕後も「アフター万博」という言葉が飛び交い、ショップなど万博の名残のある場所を「〇〇パビリオン」(例:東京のグッズショップのある場所を「丸の内オアゾパビリオン」など)と呼ぶなど、万博ロスにあえぐ人が絶えません。
そんな人々が、次への希望として熱いまなざしを向けているのが、2027年に開幕予定の横浜花博「国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」です。
【関連記事】エラーだらけにグッタリ…「並ばない万博」は苦難の連続でした。大阪万博と格闘した半年間【事前準備編】
神奈川在住民が今から覚える不安
1985年のつくば科学博のように、テーマを絞った認定博覧会(認定博)ではあるものの、1990年の大阪花博以来の大規模な園芸博覧会となるだけあって、横浜花博は大阪・関西万博を楽しんだ人たちの次なる期待を背負っています。
詳細な概要はこれからにもかかわらず「通期パスを買う」「初日から行く」と息巻いている人々がSNSでは散見されています。
横浜市在住にもかかわらず、深夜バスを駆使して万博に何回も訪れた筆者も、居住地と近い場所で行われる予定の横浜花博は、通期パスを購入するか、バイトなどで潜り込めないかと企んでいます。
一方で、会場予定地に近い住民の立場としては、少々複雑な思いがあります。果たして、あの大阪・関西万博を楽しんだ人が、満足をしてくれるのか…今から不安でたまらないのです。
【1】“横浜”のイメージとは違う、地理的な問題
まず、あげられるのが地理的な問題です。横浜花博、という字面だけでみると、みなとみらいあたりで、観覧車や帆船のホテル、赤レンガ倉庫をバッグに花畑が広がっているイメージを普通の人は思い浮かべるでしょう。
しかし、開催されるのは、横浜駅から相鉄線で山の方に向かって22分、そこからバスに乗った先にひろがる旧上瀬谷通信施設(米軍施設跡地)です。
その地がある旭区・瀬谷区は、ネットのネタ画像である横浜市内の偏見地図でも、「横浜を名乗る何か」と称され、横浜市の区のカーストでも下位レベルという認識が根強い場所です。
旧上瀬谷通信施設は、かつては米軍施設出会った関係もあり、高度成長期に開発が出来ず発展途上であった場所でした。そんな落ち着いた環境ということもあり横浜のベッドタウンとして住宅街が広がっているため生活道路がびっしり。
地理的に、東名高速道路、中原街道、環状4号、国道16号、246号、467号などの主要幹線道路が近隣に集まっていますが、敷地周辺は片側一車線の道路が多いのが現状です。
1999年のよこはま動物園ズーラシアが開園し、数年間は、近くの中原街道が週末には必ず渋滞し、住民を悩ませていました。現在はだいぶ解消しましたが、ズーラシア渋滞なる言葉は今でも使われています。近隣の南町田グランベリーパーク付近も、土日は交通渋滞が絶えません。
住宅街と隣接しておらず、交通がスムーズだった大阪・関西万博に比べ、横浜花博は「その地にたどり着くまでも困難」と呼ばれる万博になる可能性があります。果たして、多くをさばけるまでの道路整備・対策は開幕までにされるのでしょうか?
【2】物足りない規模感。大阪万博の約半分?
端から端まで歩くだけでも、約30分かかった大阪・関西万博。通期パスのリピーターが多かったのは、「1日、2日では回り切れない」規模であったことです。
大阪・関西万博の会場の広さは約155ha(ウォーターエリア含む)。それに比べて、横浜花博の博覧会区域は現時点で約100haと発表されています。しかも、その中で会場区域は80ha。半分程度と思うと少々物足りないと感じる人も多いでしょう。
また、園芸博という性質上、屋内展示のハコモノは現在の予定図を見る限り、あっても敷地の半分ほどで、ほとんどが森や花壇などの野外展示です。大阪万博の静けさの森的なエリアが広がっていると想像してください。
自然や植物の美しさを全身でのんびり楽しめる人であれば十分満足できるかもしれませんが、大阪・関西万博で未来の最新技術や世界に触れ、知的好奇心を刺激された人が、同じようなものを横浜花博に求めてほしくはないと思うのは、勝手な考えでしょうか?
【3】大阪万博ファンの大きすぎる期待値
一番心配なのが、上記でも述べた万博ロス民も含めた、現時点での期待値の高さです。
政治的な絡み、メタンガス問題などで、開幕前は理不尽なまでもの批判にさらされていた大阪・関西万博。万博に行きたいと言えば「維新信者」「無知って怖い」「ネットでなんでも情報が得られる時代なのに」などと批判されるのが当然でした。
しかし、ふたを開けてみると、手のひら返しで絶賛する人々が続出。ネガティブキャンペーンで毒された世間の印象を払拭すべく、実際万博を見て触れて衝撃を受けた参戦者たちが、こぞって楽しさや素晴らしさを拡散しているように見えました。
この期待値の低さこそが大阪・関西万博の成功に一役買った面があるでしょう。そもそもの期待値が低ければ、それを少し超えるだけで心躍るものです。誰かに感動を報告したくなります。期待していなかったことで、感動が倍増したのです。
横浜花博では、万博で人気だった落合陽一さんプロデュース「Null2」の転生バージョンや、大阪万博の資材を使用した住友館、NTT館などが展示されると発表されていますが、この時点で「大阪万博のパビリオンがそのまま移設される!」と勘違いしている方々がSNSで見受けられます。
まだ詳細は発表されていませんが、大阪・関西万博の住友館を想像して行ったら、ただ同じ資材が使われていただけで、その展示がどんなに素晴らしい内容でも「ガッカリ」ということもあるかもしれません。
つまり横浜花博を楽しみにする地元民として一番恐れているのが、花博自体は素晴らしいのに、期待値が大きかったことが要因となって花博、そして横浜自体が批判されてしまうことです。
どうか勝手にガッカリしないで欲しい
横浜では毎年、横浜公園などを中心に『よこはま花と緑のスプリングフェア』が開催されています。その庭園の美しさを目にしている住民としては、盛り上がるのはいいのですが勝手に期待して勝手にガッカリすることだけは避けて欲しいなと思います。
一番いいのが期待している人の期待値をさらに上回る展示がされることでしょうが、人気になったらなったで、上記のアクセスの問題も出てきますし、難しいところですね。
(小政りょう/ライター)

















