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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

不要不急? 忘れかけた味わいを取り戻しにいくのは必要だ

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 関西にしばらく戻れていない。ウマいものを食べてないから気が晴れないのだ。半世紀前から行きつけてきた大阪ミナミの居酒屋「二色」に「おう、どないやねん、来たでぇ」と声を上げて飛び込みたいのに、いつになったら行けるんだ。緊急事態が続くんじゃ、夢で見るしかないのか。

 二色の名物、串揚げは何でもウマい。壁に貼ってあるお品書きの右からでも左からでも順番にダァーッと全部、揚げてもらっても安いもんだ。串カツというけど、もちろん「牛カツ」だ。うずら串もウインナーもタマネギもシシトウもなかなかのもんだ。さらに名物の関東煮、つまり、おでん。いつ誰が関東から伝えたのか知らないが、牛スジもダイコンもだしのしみた(しゅんだ)タマゴも憎たらしいほどウマいんだ。さすがに池波正太郎もここの味は知らんだろけど、いやぁ、書き連ねて思い出してたら、よだれが出てきてほんまに食いに行きたくなったよ。不要不急が解けたらGoToトラベルでどうぞってか? 言われなくたって行ってやるわい。我はおでんと串揚げの“味”を思い出しに行きたいんだ。不要も不急もあるか。必要なんだ。忘れかけた味わいを取り戻しにいくのは映画館に行くのと同じだ。味わいに行かないと、食感も五感も体が腐ってしまうんだ。

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