著者のコラム一覧
細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

「おい沢村、喜べ。映画出演だぞ。主演は高倉健。健さんだぞ」

公開日: 更新日:

 裏番組のアニメとの視聴率戦争に明け暮れていたTBSテレビ「YKKアワー キックボクシング」にとって、エースである沢村忠の存在はその旗頭として欠かせないものだった。放映していたTBSは、キックボクシング創始者であるプロモーターの野口修と二人三脚で、この戦争に勝ち抜こうとしていた。

 そんな最中、野口プロモーションに一本の電話が鳴った。電話は東映からだった。

「お宅の沢村選手とキックボクサーの面々をキャスティングしたいのですが」

 この時代、任侠路線が全盛期を迎えて次々とヒット作を量産していた東映は、高倉健、菅原文太の2大スターの新作に、野口プロ所属のキックボクサーにオファーをしたのである。タイトルは「ごろつき」。プロデューサーは女優・富司純子の実父である俊藤浩滋で、監督は安室奈美恵SPEEDを輩出した沖縄アクターズスクール開設者・マキノ正幸の実父にして、長門裕之、津川雅彦兄弟の叔父にあたるマキノ雅弘である。オファーがあった背景を、生前の野口修は次のように回想する。

「もともと俊藤さんっていうのは、神戸にいた頃、嘉納のピス健の子分だった。それもあってウチとは長い付き合いで『何かあったらよろしく』ってことは言われていたの」「嘉納のピス健」とは、山口組以前の神戸やくざの大物にして神戸・御影の嘉納財閥の御曹司、さらに日本のボクシングのパイオニアのひとりである大日本拳闘会会長の嘉納健治のことである。野口修の父である元プロボクシング日本ウエルター級王者、野口進はこの大日拳の所属だった。その関係を指している。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    本命は今田美桜、小芝風花、芳根京子でも「ウラ本命」「大穴」は…“清純派女優”戦線の意外な未来予想図

  1. 6

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  2. 7

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  3. 8

    石破首相続投の“切り札”か…自民森山幹事長の後任に「小泉進次郎」説が急浮上

  4. 9

    今田美桜「あんぱん」44歳遅咲き俳優の“執事系秘書”にキュン続出! “にゃーにゃーイケオジ”退場にはロスの声も…

  5. 10

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃