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荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<85>手作りの写真集「八百屋のおじさん」笑顔がいいよな~、地方から銀座に売りに来るんだ

公開日: 更新日:

八百屋のおじさん(1)

 これまでに出したオレの写真集、どれぐらい出てるのかってよく聞かれるけど、何冊なのかわからないんだよね。何年も前に550冊を超えたって言うんだけどさ、自分じゃわからないんだよ。

 オレの一番最初の写真集は、スケッチブックにプリントを貼り込んで自分で作った写真集だね。電通時代に作り始めた、手作りの写真集。昔はね、ものすごくマメに整理してたんだよ。スケッチブックに写真を貼り込んで、1冊1冊自分だけの写真集をいっぱい、何百冊も作ったわけよ、レイアウトも決めてさ。銀座に月光荘という画材屋があってさ、そこのオヤジと仲良くなって、このスケッチブックにしようって決めたんだ。B4の大きさで、日にちと、撮ったカメラとレンズも書いてたね。ミノルタSRとかね。

電通時代に作り始めた手作りの写真集

 オレは第1回太陽賞の受賞者だからさ、電通では特別待遇だったんだよ。で、仕事してなかったからさ、毎日、スケッチブックの写真集を作ってたんだよ。毎日撮って、毎日プリントしてね。タイトルつけて、レイアウトもやって、プリント貼り付けて。オレ、デザイナーの才能もあるからね(笑)。(大学4年生の1962年から63年に撮影した「さっちん」で、雑誌『太陽』の創刊1周年を記念して創設された第1回太陽賞〔平凡社主催〕を受賞)

 そういうのを作ってた時代があったんだよ。(写真の)コンタクトだけじゃなくて、どうしてもその場その場で写真集を作っちゃう。そのときの秀作っていうのかな、そういうので1冊作っちゃうわけよ、その頃は。1冊1冊私家版の写真集を作ってたわけだね。

 この「八百屋のおじさん」は、電通に入った頃に作ったスケッチブックの写真集なんだ。「さっちん」の後くらいかな(1964年に撮影)。これが出てきてさ、何年か前、オペラシティでやった展覧会のときに出したんだよ(2017年に東京オペラシティ アートギャラリーで開催された個展「写狂老人A」に出品)。このおじさん、いいだろ~。笑顔がいいよな~。地方から八百屋が銀座に売りに来るんだ。銀座の路地裏でね、売りに来る八百屋のおじさんの笑顔を、ずーっと撮ってたんだよ。

(構成=内田真由美)

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