井筒和幸
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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

今の政治家や元電通の理事は映画ネタにもならない金欲だけのチンピラだ

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 マッドキラーを演じたら天下一の悪役がいた。ヘンリー・シルバという。バート・レイノルズが珍しく刑事役で主演した「シャーキーズ・マシーン」(82年)では殺してもなかなか死なない殺し屋を怪演した。小さい時から演劇学校に通い、アクターズスタジオ出身の今93歳のご長老だ。昔の吉本新喜劇で奥目の八ちゃんと呼ばれた岡八郎師匠の顔を裏干ししたような、その悪党ヅラは不気味だけど、思わず笑ってしまう愛嬌もあった。その映画では狂気が炸裂、殺されるまで恐ろしかった。チャック・ノリスの「野獣捜査線」(85年)でも暗黒街のダニ虫を演じ、最後にぶち殺された。「L.A.大捜査線・狼たちの街」(86年)で見たウィレム・デフォーの悪党は主演の刑事が殺された後もまだ生きていて、最後は火だるまになって果てた。悪党には悪に走った理由があった。だから感情移入できたのだが、アッパレな悪党が登場する映画もなくなった。

 今の政治家や五輪賄賂で捕まった元電通の理事は映画ネタにもならない金欲だけのチンピラだ。悪党と呼ぶのももったいない。ついでに森喜朗元会長も病気の見舞いで200万、AOKIから手渡されたとか。どいつもこいつも浅ましいもんだ。悪が悪らしかった映画が懐かしい。「許されざる者」(93年)のジーン・ハックマンの保安官も見事な悪党ぶりで最後はぶち殺された。いい映画だ。

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