【アメリカ衰退】トランプ再選で衰退はあっという間の話に
「アメリカの覇権喪失と世界の転換」浅海保著
「アメリカを再び偉大に」のかけ声もむなしく、トランプのアメリカは衰退を続ける。
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「アメリカの覇権喪失と世界の転換」浅海保著
今年は「9.11」同時多発テロから数えてちょうど四半世紀になる。ふりかえれば、あの衝撃的なテロ事件がアメリカの分裂と衰退の始まりだった。本書は、そんな見方に立ってアメリカの衰退と世界史の大転換を論じる。
著者は長年、読売新聞でワシントンやモスクワ特派員を務めた外報記者。まさに冷戦最末期から1990年代のアメリカの一極化と絶頂を経て「9.11」以降のきりもみ降下のような年月を最前線で目撃してきた立場だ。
著者は当初、2023年のハマスによるイスラエル攻撃を機にアメリカの衰退を論じる作業に着手したが、翌年の大統領選でトランプが再選される光景を前に「ついに、ここにまで至ったんだ」というコトバが口をついて出たという。アメリカの衰退はもっと長い年月をかけてじわじわと進むと思ったのが、トランプ再登場であっという間の話になったということだろう。
トランプと気脈を通じるプーチンとネタニヤフを著者は「脇役」と呼び、ウクライナ侵攻やハマスとの対決を「脇役の暴走」と言う。
トランプは彼らに引きずられ、その間隙を縫って中国とグローバルサウスが台頭する。まさに大いなる転換期だ。 (筑摩書房 2310円)
「アメリカ史とレイシズム」中條献著
「アメリカ史とレイシズム」中條献著
トランプの再登場でますます醜悪な様相を呈するのが移民排斥に人種差別。本書はアメリカの黒人史を専門とする歴史学者が、最新の知見を盛り込んで論じるアメリカのレイシズム(人種主義)の歴史。日本ではリンカーン大統領の奴隷解放宣言が出されて差別はなくなったと思われているが、実はその後も南部ではさまざまな州法や社会制度を通じて差別が温存された。悪名高い「白人用・有色人種用」の店のドアやバスの座席指定などはわかりやすい例。この差別にローザ・パークスという一人の女性が抵抗して始まったのが「バス・ボイコット」。
本書は「分離すれど平等」という屁理屈で人種隔離をし、都市部ではゲットーに囲い込んだ時代から「構造的人種差別」への抗議が高まった現在までの歩みを丁寧にたどる。
アメリカの暗部をなす差別への怒りだけでなく専門家として抱くアメリカへの愛着が行間に見え隠れし、痛切な色合いを醸し出している。 (岩波書店 1056円)
「アメリカが壊れる!」野口悠紀雄著
「アメリカが壊れる!」 野口悠紀雄著
「アメリカの豊かさの本質は寛容にある」が持論の著者。「異質なものを積極的に受け入れ、それを吸収・活用して制度を構築し、社会全体の活力に変えていく力」があるからだ。
いや、これはすでに過去形になりつつあるかもしれない。トランプ政権は科学研究費を削減し、研究者を締めつけ、留学生のビザも間口を狭くした。自由貿易体制こそ多様性ある経済の根幹なのに、トランプ政権は関税を一方的に課したあげく、イラン攻撃に踏み切って中東の安全保障と世界の経済に甚大な悪影響を及ぼしている。
著者は経済の変化の兆しをすばやく見つけては一般向けの著書を数多く出版してきた経済学者。そのフットワークの軽さがよく表れた新書だ。 (幻冬舎 1122円)



















