著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

川口春奈「silent」は“もどかしさ”が切ない 繊細な表現をする目黒蓮に拍手

公開日: 更新日:

 川口春奈主演「silent」(フジテレビ系)が、ますます目の離せないドラマになっている。

 高校生の紬(川口)と想(目黒蓮)は、周囲も認める似合いのカップルだった。しかし卒業後、想は突然姿を消してしまう。それから8年。偶然出会った想は「若年発症型両側性感音難聴」で耳が聞こえなくなっていた。それが紬と一方的に別れた理由だったのだ。

 8年の間には変わったことと変わらないことがある。紬は高校時代の仲間である湊斗(鈴鹿央士)と付き合っている。想には彼を慕う、ろう者の奈々(夏帆)がいる。だが紬と想の中で、互いの存在は消えていなかった。湊斗は2人のため、そして自分のためにも紬と別れようとする。

 本作の秀逸さは、言葉に頼り過ぎない物語構築にある。思ったことを何でもセリフとして語らせるドラマとは異なるのだ。3人の「会話」はスマホを活用したものになっている。とはいえ、当然のことながら限界がある。微妙なニュアンスが十分に伝わらない“もどかしさ”が切ない。

 見る側は、わずかな沈黙の時間や表情の中に、彼らの気持ちや言葉にならない思いを探り、想像し、自分なりに補っていく。その共感性もしくは共振性こそが、このドラマのキモと言っていい。

 川口はもちろん、間の取り方や表情の変化などを繊細に表現している目黒にも拍手だ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い