著者のコラム一覧
北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

映画で理解するパレスチナ問題(後編)ユダヤ人とパレスチナ人は分かり合えないのか

公開日: 更新日:

 そのナシェフが主演した「テルアビブ・オン・ファイア」(18年、サメフ・ゾアビ監督)も見逃せない。パレスチナ人・イスラエル人双方に大人気という設定の劇中劇「テルアビブ・オン・ファイア」の脚本家がイスラエル軍の検問所司令官に翻弄されるさまをユーモラスに描くが、パレスチナ人の主人公が中東の伝統的料理「フムス」を口にしない理由が明かされると、喜劇の裏にある悲劇、パレスチナの過酷な現実が見る者の心に突き刺さる。

■実在の管弦楽団をモデルにした「クレッシェンド 音楽の架け橋」

 ユダヤ人とパレスチナ人は分かり合えないのか。ドロール・ザハビ監督「クレッシェンド 音楽の架け橋」(19年)は、指揮者ダニエル・バレンボイムと批評家エドワード・サイードが設立した実在の管弦楽団をモデルに、イスラエルとパレスチナの若者がひとつの交響曲を奏でることで手を取り合えるかを問いかける。

 日本には、映画化されていないが手塚治虫の名作漫画「アドルフに告ぐ」(1983~85年、文芸春秋)や村上春樹氏のエルサレム賞受賞スピーチ「壁と卵」(09年)もある。解決の糸口を容易には見つけ難いパレスチナ問題だが、問題に正面から向き合う文芸作品が作られてきたことも事実だ。そうした作品を通じてパレスチナ問題に関心を持ち続け、できる限り視野を広く持って共通善としての「平和」を希求していこう。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  2. 2

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  3. 3

    阪神・佐藤輝明が“文春砲”に本塁打返しの鋼メンタル!球団はピリピリも、本人たちはどこ吹く風

  4. 4

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  5. 5

    広末涼子「実況見分」タイミングの謎…新東名事故から3カ月以上なのに警察がメディアに流した理由

  1. 6

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  2. 7

    国保の有効期限切れが8月1日からいよいよスタート…マイナ大混乱を招いた河野太郎前デジタル相の大罪

  3. 8

    『ナイアガラ・ムーン』の音源を聴き、ライバルの細野晴臣は素直に脱帽した

  4. 9

    初当選から9カ月の自民党・森下千里議員は今…参政党さや氏で改めて注目を浴びる"女性タレント議員"

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」