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北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

映画で理解するパレスチナ問題(中編)報復劇のむなしさを暴いたスピルバーグ監督作「ミュンヘン」

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 イスラエル戦時内閣のアミハイ・エリヤフ大臣(極右政党「ユダヤの力」所属)が5日、「核爆弾をガザに投下してハマスを皆殺しにするべきか」と問われて「それも選択肢の一つ」だと放言した。ネタニヤフ首相は即座に職務停止処分を決め、本人は「比喩だ」と釈明している。しかし、ラジオ番組での誘導的な質問に対する回答とはいえ、「公然の秘密」だった核保有を認めただけでなく、その使用を閣僚が公言したことに衝撃が走った。事態はどこまでエスカレートする可能性があるのか。

 前回に続いて、第1次中東戦争以降の歴史を概観しよう。アラブナショナリズムの高まりを受けたエジプトのナセル大統領がスエズ運河国有化を宣言したことを機に、英仏イスラエル三国がエジプトを侵略するも失敗した第2次中東戦争(1956年)を経て、67年にはイスラエルが奇襲攻撃を掛けてガザ地区、ヨルダン川西岸、ゴラン高原、シナイ半島をあっという間に占領した第3次中東戦争(6日間戦争)が起きる。屈辱にまみれたエジプトは失地回復するべくイスラエルへの奇襲攻撃を準備するが、両国のはざまでモサドのエージェントとして暗躍したのがナセルの女婿アシュラフ・マルワンだ。映画「コードネーム エンジェル」(2018年、アリエル・ブロメン監督)は、ナセルを継いだサダト大統領の信頼を得ながら73年の第4次中東戦争(ヨム・キプール=贖罪日戦争)に至るまでの間、マルワンが仕掛けた諜報活動(ヒュミント)を緊迫したタッチでリアルに描き必見だ。

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