尾上菊之助も松本幸四郎も…芸の継承は「父から子」という単線だけではない

公開日: 更新日:

 武部源蔵は片岡愛之助。菊之助との共演機会がそう多くないせいか、探り合いをしている感じがあり、緊張感があり、それが松王丸と源蔵の距離感にシンクロしている。

■サラリーマンの悲哀が浮き立つ「菊之助」の松王丸

 松本幸四郎も昼夜とも、父・松本白鸚が演じたことのない役だ。『御浜御殿綱豊卿』では富森助右衛門、綱豊は仁左衛門。

 この組み合わせは5回目。幸四郎はすでに綱豊も演じているが、もう一回、仁左衛門から学ぶための共演なのだろうか、助右衛門に戻った。綱豊が教えたのに助右衛門は完全には理解していない。この関係が仁左衛門と幸四郎に重なって見え、その意味では名コンビである。

『伊勢音頭恋寝刃』で、幸四郎が演じる福岡貢も、仁左衛門の当たり役のひとつだ。

 菊之助も幸四郎も、父親にそっくりという容姿ではないのを逆手にとり、父のやっていない役にも挑んでいる。孝太郎も仁左衛門に似ていないので、女形の道を選んだ。今月の歌舞伎座は、芸の継承は、「父から子」という単線だけではないという見本だ。

 その一方、ストレートな父から子への継承として、4代目中村雀右衛門の13回忌追善として、5代目の『傾城道成寺』もある。

(作家・中川右介)

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  3. 3

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  4. 4

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  5. 5

    坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず

  1. 6

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  2. 7

    板野友美からますます遠ざかる“野球選手の良妻”イメージ…豪華自宅とセレブ妻ぶり猛烈アピール

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景