『花まんま』結婚を目前に控えた兄妹。妹は死者と交流する不思議な秘密を抱えていた

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酒向芳の演技があってこその佳作

 物語を面白くしているのは鈴木亮平演じる俊樹の単純で剛直な性格だ。妹と死者のつながりを知りながら、そのことを忘却しようと務めていたが、結婚を前にして、両者に何が起きていたのかという現実に直面する。さらにフミ子から一生のお願いを聞いてほしいと懇願される。

 だが兄としては受け入れられない。そうした心の迷いの中にありながら、祝い事の日程は迫ってくる。そのとき兄はどんな決断を下すのかというのが本作の見どころだ。

 巧みに仕掛けられた伏線を回収しつつ「なるほど、そうきたか」と唸らせるストーリー展開で客席に感動のカタルシスを与える。筆者は意図的に泣きに誘導するあざとい人情話は好きではないが、この作品には不覚にも胸がジーンときた。

 感動の核心にいるのは酒向芳演じる繁田仁だ。酒向の演技があってこその佳作と言っていい。喜代美の姉役のキムラ緑子、兄役の六角精児らが酒向の表現力を補強している。この3人が芸達者であるがゆえに有村の存在感が引き立ち、過去の悲劇が感動に結合するという構図になっている。幼いフミ子と俊樹を名残惜しげに見送る3人の姿が心に残る。

 ある人物が遠くで暮らす人と記憶を共有するというのは、昔からテレビや書籍などでリポートされている。一種の超常現象だ。美輪明宏や江原啓之が喜びそうな怪しいスピリチュアルな世界だが、本作を見るとこんな世界観も悪くないなと納得してしまうから不思議だ。

 ラストは少しホロ苦い。だが、その切ない味わいが大人の感賞眼を満たしてくれる。この先、フミ子と繁田の家族たちとの関わりはどうなるのかとあれこれ想像してしまう。劇場で鑑賞したあと、誰かと論じるのも楽しいはずだ。

 それにしても花で作った弁当の美しさよ。 敷き詰められた白い花びらがフミ子のウエディングドレスに見えたのは筆者だけでないだろう。

(文=森田健司)

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