『太陽(ティダ)の運命』オスプレイ、教科書問題、辺野古基地 大田昌秀を追い落とした保守政治家・翁長雄志の「原点回帰」

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『太陽(ティダ)の運命』4月19日(土)より東京 ユーロスペースほか全国順次公開

 ドキュメンタリー映画とは重宝なものだ。わずか1、2時間で社会的な事件や歴史を学ぶことができるのだから。この「太陽の運命」もしかり。上映時間129分で沖縄の現代史をしっかり復習できる。「太陽」は「ティダ」と発音し、「太陽」のほか昔は「リーダー」を表す言葉だった。

 1972年の返還以降、沖縄では8人の県知事が誕生した。本作はそのうち第4代の大田昌秀と第7代の翁長雄志にスポットを当てている。両者の相克と、その後の奇妙な共通性に引き込まれてしまう。

 大田と翁長――。その違いはまず政党にある。大田は1925年生まれで、同志社大教授、琉球大法文学部長を経て90年に沖縄県知事に就任した。98年の知事選で落選したのち、2001年に社民党から立候補し参議院議員に転じている。つまりは野党に属する政治家だ。

 一方、1950年生まれの翁長は85年から那覇市議、沖縄県議、那覇市長を経て自民党沖縄県連幹事長を務めた。県知事に就任したのは2014年だった。こちらは与党系ということになる。

 野党と与党だけに両者は対立した。

 大田は1998年に普天間基地の代替施設海上ヘリポートの受け入れを拒否、政府と対立した。これに対して翁長は99年から辺野古移設を推進する立場にあり、県議として太田県政攻撃の急先鋒だった。その結果、大田を退陣に追い込んだ。劇中でも語られるが、後年、翁長は県知事選に立候補した際に大田に面会を求めた。目の前に翁長が来ているというのに、大田は会おうとしなかったという。両者の心情的なしこりがいかに根深いかを示すエピソードだ。

 と、ここまでは分かりやすい与野党政治家の対立話だ。この先が少しややこしくなる。今度は翁長が国と対決姿勢に転じたのである。

 翁長は知事就任前の2012年にオスプレイ配備に反対する県民大会の共同代表に就いた。翌13年、オスプレイ配備撤回と普天間基地県内移設断念を求める建白書を安倍晋三首相(当時)に提出。さらに応援していた仲井眞弘多知事が辺野古埋め立てを承認するや、仲井間と決別。14年、オール沖縄勢力を結集して知事選に立候補し、仲井眞に10万票差で圧勝した。
以後、翁長は「辺野古が唯一」を繰り返していた安倍晋三と正面から対立した。自民党県連幹事長がいつしか国の方針に疑問を抱くようになり、知事に選任されて対立姿勢を先鋭化させたことになる。

 この映画を見ながら「まるでミイラ取りがミイラになる、だな」と苦笑させられた。辺野古移設を推進し、保守の立場から大田を蹴落とした者がいつしか大田に賛同する立場に入れ替わった。ここに沖縄問題の深刻さがある。理性を備えた良心的な知事であれば、誰もが県民の意向を汲んで国と対立することになるのだ。いわば原点回帰。本作は良い意味での政治家の「変節」をリポートしたと言えるだろう。

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