長渕剛がヤクザの英二で“硬派路線”へ
「とんぼ」(1988年/TBS系)
“バブル絶頂”目前の1988年。ハードに働いて派手に飲むのがサラリーマンの美徳とされ、「24時間戦えますか」というフレーズがもてはやされていた。この年の7月クール、フジテレビ系木曜劇場では後に“トレンディードラマ”の象徴となるダブル浅野が主演した「抱きしめたい!」が放送される。
都会のイケてる三十路手前の女子たち。彼女らに憧れる女子がいて、それに群がる男子がいて──そんな時代だった。だからこの年のドラマを語るとき、「抱きしめたい!」は外せない。
でも、同じ88年の10月クールにTBS系で放送された「とんぼ」もまた、この年の代表作だと思う。主人公は長渕剛(当時32)演じるヤクザの英二。東京の下町を舞台に、血と涙と怒りが交錯するこのドラマは、浮かれる時代へのカウンターであり、去りゆく昭和の叫びでもあった。
70年代後半から80年代前半にかけての長髪で線が細く、ちょっと女々しいフォークを歌う長渕を知る僕には、バイオレンスすぎる彼の姿に違和感というか痛々しさも感じていたのは正直なところ。後の信者にはボコられそうだから大きな声では言えないけれど。


















