「カックラキン」で開花したコメディーの才能がなければ…
ここで過去に指摘したように「ニューミュージック歌謡」としての建て付けが素晴らしい。あくまで歌謡曲でありながら、音楽界の新しい波、そしてこの時代の若者の気分をしっかりと捉えている。
逆にいえば、その後も30万枚以上を叩き出し続けたのには、「私鉄沿線」の余波もあったろうが、本人とスタッフの有能さや奮闘も大いに奏功したことだろう。
さて、この年から日本テレビ系「カックラキン大放送!!」が始まる。
私世代なら、誰もが見ていた人気バラエティー番組だ。
野口五郎は、坂上二郎や研ナオコとともに、この番組のレギュラーに選ばれ、コメディーの才能を開花させていく。そして自著「僕は何者」(リットーミュージック)には、この頃の途方もない忙しさについて克明に書かれている。
しかし、よく知られるように、野口五郎は、歌手だけでなくギタリストとしても達者で、つまり本質的には「音楽人」にもかかわらず、コメディーの才能で認知され過ぎたとも思う。それは、彼にとって幸せなことだったのか。