「去年、本能寺で」円城塔著
「去年、本能寺で」円城塔著
信長は苛だっていた。豊臣秀吉が中国に兵を出したのだ。ルイス・フロイスが、信長が日本66カ国の領主となった後、中国を平定しようとしたと書いているが、信長としては勝手に風評を立てられたと思っている。秀吉が信長の意を継いだわけではなく、火薬や硫黄などの世界的な取引の中にチャンスを見いだしたのは、着眼点としては悪くない。だが日本国内ならともかく、秀吉は恐怖を知らない。
信長は歴史の登場人物のひとりに過ぎなかったが、いつしか先見の明をもった革命児とされた。本人としては、本当のワシではないと思っているのだが。
軍事AIや詩歌や楽曲を生成するAIまでもが登場する、歴史SF小説11編。 (新潮社 2090円)