(1)相次ぐ氷河崩壊…未知のウイルスによる感染爆発の可能性
世界各地で氷河や永久凍土が急速に溶けている。4月には熱帯氷河の9割が集中する南米アンデス山脈が話題となり、5月にはスイスの氷河崩落が報道された。原因は地球温暖化。昨年の世界の平均気温は、記録が残る1850年以降最も高く、産業革命前と比べて初めて1.5度の上昇を超えた。温暖化対策の国際的な取り組みである「パリ協定」が1.5度に強くこだわったのは、それ以上になると地球規模で熱波や洪水の頻度と強度が急増するためだ。
人類は未知のウイルスの世界的拡散と流行であるパンデミックを経験し、その間隔はいまや10年に1度にまで狭まっている。温暖化による猛暑は新たな感染爆発の契機になりかねない。
パリ協定が定めた1.5度は20年間の平均気温の上限であり、1年の突破では即座に「超えた」とは言えない。ただし、異常気象は着実に増え、氷河や氷床、永久凍土は予想以上の速さで溶けている。
北極海を取り巻く国々で組織される北極評議会の2021年5月の発表によると、北極圏の気温上昇は、地球平均の3倍の速さで進行中。2019年までの50年間の地球の年平均気温の上昇は約1度に対し、北極圏は約3.1度。1983年までと比べて海氷域面積が日本の国土面積の7倍以上となる280万平方キロメートルも消失した。2050年には北極海の海氷は完全に消滅するとの予測もある。