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小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

スズキ初のバッテリーEVが初上陸!トヨタと共同開発&電池BYDのインド産eビターラが本当にスゴいワケ

公開日: 更新日:

スズキ eビターラ(価格未定)

 直近BEV(バッテリーEV)販売が伸びない日本だが、スズキの初BEVたるeビターラが遂に世界公開。先日プロトタイプ試乗が行われたので乗ってきた。国内発売は年度内予定だ。

 まず注目はサイズとデザイン。全長×全幅は4.3m弱×1.8mとコンパクトで、ガソリンSUVで言うとトヨタ ヤリスクロスとホンダ ヴェゼルの中間あたり。世界戦略BEVとしてはかなり手頃で小さく、そこはスズキらしい。

 ただしデザインは勢いが凄く、コンパクトさを感じさせない。フロントマスクはゴツめのフルLEDヘッドライトを中心に、前後フェンダーもマッチョに盛り上がって塊感は凄い。一見、イタ車やフランス車的なラテンテイストで、そもそもeビターラも世界戦略車であることを思い出す。

 一方、乗りこむと少々意外さもある。車内は、エンジンを搭載しないBEVらしく見た目以上に広く、前後2列に大人5人が余裕で座れる。またブラウンを基調にしたドア内張りやシート表皮はパッと見リッチだが、よくよく見るとスズキらしく、過剰な高品質さはない。ラゲッジ容量はリアシートスライド位置にもよるが、300ℓ強といったところだ。

インテリアの質感はスズキっぽくない

 ところがさらに細かく見ると、ディテールがスズキっぽくないのだ。例えばセンターコンソールのATシフトはロータリー式で剛性感が高く、ぶっちゃけトヨタEVを思い出す。

 それは10.1インチと10.25インチの大型モニターが並ぶ横長ディスプレイもそうで、中のアプリケーションデザインも含め、予想以上にモダン。これまたスズキっぽくない。

 そう、それもそのはず、eビターラは昨年末の欧州を皮切りにインドで発表済みで、生産もインドのグジャラート工場。昨年日本でもヒットしたガソリンコンパクトSUVのフロンクスに続く、アジア産スズキ車なのだ。

 しかも担当範囲は細かく公表されてないが、あのトヨタやダイハツと共同開発。「ハーテクトe」というEV専用プラットフォームや「オールグリップe」という電動4駆システムはスズキ開発ということだが、一定部分にはトヨタグループの力が使われている。実際に乗ってみると、システム出力で135kW/307Nmの4WDモデルの走りはスゴい。スズキの軽さとトヨタの剛性が合わさったような、イイとこどりの上質感を備えているのだ。

残る最大の焦点は国内価格

 加えて、コスト的にも動力性能的にもEVの価値を大きく左右するリチウムイオン電池は中国BYD製。これまたアライアンスパワーあればこそで、スズキ初のBEVと言いつつ、要所要所のコンポーネントにはトヨタやリーズナブルなBYD産を使っている。

 具体的にeビターラは49kWhと61kWhの2種類の電池が搭載でき、2WDと4WDが選べ、最大航続距離は2WDの61kWhモデルが500km以上といわれている。航続距離的には十分以上だ。

 残る最大の焦点は国内価格で、そこは明らかにされてないが、既存国産EVより安めの400万円台スタートと目されている。

 正直、それでも日本で売られる中国BYDや韓国ヒョンデほど安くないが、スズキはEVビジネスは動力性能以上に価格が大切だと分かっている。

 何よりeビターラは今後、「2030年までに乗用車の3割をBEVにする」というインド政府の目論見に合致している。

 日本で価格コンシャスなBEVに仕立てると同時に、急速に電動化するインドで主力EVにする。そのために日本やインドや中国の技術や調達力を結集した良コスパBEV、それが新型eビターラの本質なのだ。

【連載】クルマは乗らなきゃ語れない

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