令和ロマン・高比良くるまが“騒動”で得た「天下を獲る」ために必要な武器

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コクハク

令和ロマン高比良くるまが復帰

 オンラインカジノ問題をめぐって活動を休止していた令和ロマンの高比良くるまさんが4月28日、約2か月ぶりに復帰しました。

 結果的に吉本興業との契約は解除となったものの、コンビ活動やレギュラー番組の出演は継続、開催が発表された『M-1グランプリ2025』(ABCテレビ/テレビ朝日系)の会見にも出席し、かわらぬ姿を見せています。

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高学歴、確固たる実績、腐しようないルックスと発言力

 令和ロマン・高比良くるまさんと言えば、東京出身、本郷中学校・高等学校から慶応義塾大学文学部に入学した高学歴芸人です。

 その後、入学した慶應義塾大学のお笑いサークルで活躍し、吉本興業の芸人養成所・NSCでは主席卒業、その年には新人にもかかわらずGyao!ワイルドカードでM-1の準決勝に進出するなど、その後も年々順調にステップアップし、2023・2024年は『M-1グランプリ』で前人未到の2連覇という快挙を達成しました。

 バラエティ番組の立ち回りも難なくこなし、その分析力で自信が著した『漫才過剰考察』(辰巳出版)もベストセラーに。まだ30歳という若さで、ルックスも否の打ちどころはなく、まさにオールAを体現したような芸人であることは間違いありません。

 また、その語彙力の豊富さによる、「おかしいこと」「嫌なこと」への的確な指摘の鋭さに視聴者やネット民のみならず、業界のぬるま湯につかっているテレビマンたちを感心させることもしばしばです。

 まさにスキのない実力を備えている高比良くるまさん。その完璧さゆえに、大学時代からその才能に心酔した信者のようなファンも多かったと言います。だからこそ、オンラインカジノ問題でミソがついてしまったことは、ファンや周辺の方々は残念に思っているに違いありません。

 しかし、問題を起こしたことで、さらなる飛躍のための武器を手に入れたように筆者は感じるのです。

『M-1』2025会見で判明した、新たなる武器

 M-1グランプリ2025開催記者会見では、深く頭を下げ「御社の劇場に…」(会場は渋谷よしもと漫才劇場)と、さっそく吉本を退所した自身に対する自虐をしたくるまさん。それに対し司会の麒麟川島明さんは「史上もっともややこしいチャンピオン」と笑顔でいじりました。

 その後、昨年ファイナリスト・真空ジェシカの川北さんがオンラインカジノに言及した際、当事者のくるまさんが「うちの相方いじんな!」と叫び、相方・ケムリさんも「お前だよ!」とツッコミ、会見の中で一番盛り上がった瞬間を演出しました。

 くるまさん自身は、活動休止前とさほど変わっている様子はありませんでしたが、くるまさんに対する周りの空気が若干、和やかになっている雰囲気に見えました。

 騒動前の令和ロマン――特にくるまさんは、バラエティに出演したとしても、その完璧さゆえに、笑いはとるものの、周囲から構えられることが多かったように見えます。よく考えればさほど笑いがなかったり、ちょっとおかしな部分を彼の中に見つけたとしても、強くいじられず「自分の方が間違えているかも」「指摘したら古い人間だと思われる」と感じさせる雰囲気をまとっていたように思えます。

 表立って批判できるのはウエストランドの井口さんや鬼越トマホークなど毒舌を売りにしている芸人さんくらい。昨今のテレビの優しい雰囲気も、悪い方に作用をしていたはずです。「テレビは、基本的には出ない」「苦手なテレビマンのブラックリストを作っている」などという発言を堂々と言える怖さもありました。

 ただ、番組ではうまく立ち回り、先輩の懐にも入り、同世代ともうまくやる器用さがある。視聴者側から見ても、バラエティの枠の中でどんな位置づけでこの人を見たらいいのかの判断が難しい部分があったのではないでしょうか。

完ぺきな芸人より、スキのある芸人が好かれる?

 舞台の上の芸人さんは、この上なくカッコいいです。自身でネタを考え、演じ、時には身を削りながら、多くの人を笑顔にする。誰もが尊敬して然るべき存在です。しかし、テレビのバラエティに出る芸人さんは、どこか等身大で安心できる存在の方がいい。

 同情できる部分や、スキがあって、ちょっと「バカだなあ」感がある人のほうが、わたしたちのような一般視聴者は素直に笑うことができます。復帰前の完ぺきなくるまさんは、すごい人だと感心しながらもそんな雰囲気を感じることがほとんどできませんでした。

天下を獲るために必要なのは「負け顔」

 野田クリスタルさんのような“筋肉バカ”、粗品さんのような“ギャンブル狂”のような変人を印象付けることで「バカだなあ」感を出している芸人さんもいますが、大意はどちらかというと、「負け顔ができる芸人」ということです。

 かつての『アメトーーク』(テレビ朝日系)でかまいたちの濱家さんも「東京で必要なのは負け顔と泣き顔」と、『しくじり先生』(テレビ朝日系)で堀江貴文さんも「ずっと活躍してる人っていうのは、適度に負け顔を見せてます」と、訴えていました。くるまさんも、知識が深く頭もいいですから、そういう部分はちゃんと出すように意識していたと思います。

「1浪している、中退している」「アルバイトが続かない」「(お坊ちゃんのケムリと違い)自分は一般家庭」などという部分を話したり、とぼけたり、オタクっぽい部分を出したりしてはいましたが、経歴と実績の印象が邪魔をし、また分析好きで頭がいい分、「話術として自らを下げている」ようにしか思えず、「バカだなあ」と思えるまでには至っていませんでした。

 ただ、このオンラインカジノ問題や、謹慎、契約解除があったことで、くるまさんを「バカだなあ」と、多くの人が素直に感じられるようになったと思います。同情、共感を経てやっと等身大に思えるようになった。この不幸は、くるまさんに対して嫉妬し、いけすかないと思いながらも、吐き出せない人たちのガス抜きにもなりました。

 なにより、周りの芸人たちがリスクなくいじれるネタができたというのが一番でしょう。反社の資金源になっているという点は問題ですが、オンラインカジノという、被害者がわかりにくいというのも、他の失敗より印象のダメージは少なかった。

 つまり、このオンラインカジノ騒動は、けがの功名でくるまさんにとって今後メリットにしかつながらないような経験に思えるのです。

より最強になった高比良くるま

 7月7日放送の『耳の穴かっぽじっけ聞け!』(テレビ朝日系)にて、NSCで講師をしている作家・桝本壮志氏が「化けた」と思う芸人ベスト3としてくるまさんの名前をあげ、NSC在学中の問題児っぷりをコメントで語っていましたが、井口さんが「(今と)かわってない」というほど知的な問題児っぷりは健在です。まっすぐで、型にはまらない動きっぷりやその実力は、フリーの方が名実ともに合っています。

「自由」と「しくじり」を手に入れた高比良くるまさんはもう無敵です。今後、さらにどんな動きをするのか、活躍していくのがとても楽しみでなりません。

(小政りょう/ライター)

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