誰にでも忍び寄る認知症の恐怖…橋幸夫は団塊世代の青春そのものだった

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 子どもが一番悲しいのは、認知症が進んだ母親から、「どちらさまでしたか?」と聞かれることだという。

 私にも似た経験がある。「劇団四季」の浅利慶太さん(享年85)とは、私が若い頃から親しくお付き合いさせてもらった。彼に劇団の女性と見合いさせられたこともあった。彼に認知症の症状が出て「四季」を離れ、参宮橋の個人事務所に移ったのは2015年のことだった。

 しばらく経って浅利さんの秘書から「舞台稽古を見に来ませんか」という電話があった。勇躍して出かけた。稽古中は少し離れたところで見ていて、浅利さんがそこを離れて洗面所に行く後をついていった。入り口で待っていた。浅利さんが出てきた。彼は立っている私の顔をジーッと見つめて、「どちらさまでしたか?」と聞いた。

 私は彼の後を追うことなく、そこを出た。寂しかった、悲しかった。

 私も息子や娘に、「どちらさま?」と聞く日がもうすぐ来るのだろう。怖い! (文中一部敬称略)

(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)

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