『プリーズ・ミスター・ポストマン』60年代を席巻するモータウン・サウンドへの返答
アルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』(1963年11月22日)⑥
■『プリーズ・ミスター・ポストマン』
この連載、アルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』に入ってから、同じような話ばかりしているが、ここでもやはり、ジョンのボーカルがとにかくいい。
カバー曲で、オリジナルはマーヴェレッツという黒人ガールグループ。モータウンの前身的レーベルといえるタムラからリリースされ、全米ナンバーワンとなったヒット曲だという。
そういえば『ウィズ~』でいえば、『マネー』も原曲はタムラで、『オール・アイヴ・ゴット・トゥ・ドゥ』でジョンが意識したスモーキー・ロビンソンも、のちに「ミスター・モータウン」みたいな存在になる音楽家。
つまり『ウィズ・ザ・ビートルズ』は、その後、シュープリームスや(リトル)スティーヴィー・ワンダーを擁して大ブレークするアメリカのレーベル=モータウンへの、イギリスからの返答といっていい。
ちなみに、この曲のカバーで、ビートルズと同じくらい有名なのが、カーペンターズ版(74年)。先の「同じような話」に重ねれば、カレン・カーペンターのボーカルもとにかくいい。
で、ジョンとカレン、どちらに軍配が上がるかというと、うーむ。競技が違うので比較不可能。プロレスと相撲ぐらい立ち位置が異なる。いや、プロレスとフィギュアスケートだな。
■『ロール・オーバー・ベートーヴェン』
「ロックンロールに別名を与えるとすれば チャック・ベリーだ」はジョンの言葉。
そんなロックンロールの生みの親=チャック・ベリーがオリジナル。機嫌よさそうにジョージが歌って、さらにリードギターも弾いている。
今回はリズムに注目していただきたい。この曲、「♪ツツタツ・ツツタツ」というエイトビートか、「♪ツッツタッツ・ツッツタッツ」のスイングか、どっちでしょう?
もちろん正解などないのだが、私の聴感だと、それらの中間というか、何だか両方が混じっているように聴こえるのだ。
そして、まさにこのエイトビートとスイングとのズレ、ぶつかりから、世界中のベビーブーム世代の腰を揺らした、もっとも気持ちのいいリズムが生まれたと考えるのだが、どうだろう。
そのあたりの痛快な気分を、この曲のかつての邦題は表現していた──「ベートーヴェンをぶっ飛ばせ」。
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