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鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

大リーグ監督は常に“クビ”と隣り合わせ 選手に劣らずシビアな環境に身を置いている

公開日: 更新日:

 しばしば「解雇するために雇う」(Hire to Fire)ともいわれるように、大リーグにおいては公式戦期間中の監督解任は見慣れた光景である。

 今季もアレックス・コーラ(レッドソックス)とロブ・トムソン(フィリーズ)が4月下旬に相次いで解任された。

 コーラはレッドソックスの監督に就任した2018年に、球団にとっては5年ぶりとなるワールドシリーズの優勝を達成している。

 トムソンはフィリーズで300試合以上監督を務めた人物としては、歴代最高の勝率を残している。

 2人とも、球団にとっては記録に残る監督である。

 日本のプロ野球の感覚からすれば、いずれも地区最下位ながら、10勝17敗のコーラも、9勝19敗のトムソンも、4月の解任は早過ぎるように思われるかもしれない。

 だが、解任する側にとっては、早い時期だからこその決断という理屈がある。

 すなわち、シーズン序盤で監督を交代すれば、その後実績ある選手たちの調子が上昇し、劣勢が挽回される可能性があるものの、判断が遅れれば成績が低迷したままシーズンが終わりかねない。

 あるいは、監督の直接の上司であるゼネラルマネジャー(GM)には別の理由がある。

 球団側が高額の契約で迎え入れた選手たちがいるにもかかわらず成績不振なのは、監督が選手の能力を適切に引き出せていない証拠にほかならないというのだ。その人物に指揮を執らせている自身の責任回避という側面もあるだろう。

 さらに、コーラの解任により、レッドソックスは傘下の3A級ウースターで監督を務めていたチャド・トレーシーを起用し、フィリーズはトムソンの次にベンチコーチでドジャースとマーリンズで監督だったドン・マッティングリーを迎えた。暫定監督であれ後任者を即座に補充できるという事実は、経営者側が不振の監督を早期に解任しやすい環境をつくっているともいえる。

 映画「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」(1989年)には、マイケル・J・フォックス演じる主人公のマーティがファクシミリ1枚で解雇を通告される場面がある。また、2016年の大統領選挙に立候補する直前までNBCのリアリティー番組「アプレンティス」の司会を務め、「君はクビだ!」のセリフで知名度を高めたのがドナルド・トランプだった。米国では「解雇」や「クビ」は日常的な語彙の一つといっても過言ではない。

 1シーズンに4人が監督を務めた1977年のレンジャーズや、ヤンキースの監督を5度務め、5度解任されたビリー・マーティンの例を含め、大リーグの監督は選手に劣らず厳しい競争の中に身を置いているのである。

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