著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

colombo cornershop(大阪・本町)四半世紀の歴史を刻む写真集と洋書がひしめく古書店

公開日: 更新日:

 御堂筋の一筋西。オフィス街だがホテルも増えた。店先にテイクアウトのコーヒー窓口と椅子、それに「VOGUE」「宮廷の美術」などが並ぶラック。外国人観光客が立ち止まり、常連らしき人がコーヒー片手にくつろいでいる。

「コーヒーは、立ち寄りやすくするための入り口にと思って」と、迎えてくれた店主の綿瀬貴泰さんが穏やかな笑顔を見せる。写真集とアート本がひしめく8坪ほどの古書店だが、四半世紀の歴史を刻んでいたとは。

「証券会社を3、4年で辞めて」に始まる履歴話に、身を乗り出した──。

 90年代のインターネット体験が原点。欲しかったポラロイドカメラが3万、4万円したのに、アメリカのサイトでは9.99ドル。半信半疑で注文すると本当に届き、「うぇー! ってなりました(笑)」。

 古い釣り具やギター、本も海外からネットで買うようになり、妻とアメリカへ。古本屋やスリフトショップなどを巡って買い付けを。「2人で120キロを持ち帰った」こともあったとか。雑貨と古い洋書を扱う店を南船場で始めたのが2000年。

近隣の建築事務所の不要になった貴重な本を次の人に“橋渡し”

「近隣に『閉じる』というデザイン事務所や建築事務所が多く、不要になった本の買い取り依頼が増えたんです。一方、これから始める人も多く……」

 貴重な本の“橋渡し”をしてきたのだ。現在のビルの上階への移転を経て、08年から路面店に。

 店にいると、目があちこちへ引っぱられるなーと思った。無造作に積み上がった中に東松照明や田島大介。分厚い背中を見せるのは「写真・中村由信、文・井伏鱒二、解説・宮本常一」との「瀬戸うちの人びと」。真っ赤な表紙の「中華人民生活百貨遊覧」を手に取ると、「雑貨を切り口に、改革開放が始まったころの中国の日常を撮ったもの。中国人がよく買っていくんです」と綿瀬さん。

 面白いー。で、綿瀬さんが特にお好きなのは? 

「ベン・シャーンですね」

 作品集のほか、写真集も出してくれた。

「彼はウォーカー・エヴァンスらと共に世界恐慌後の農村部を記録するFSA(農業安定局)プロジェクトの一員だった。そのときに撮った写真をもとに、被写体と背景の入れ替えなどの手法で数多くの絵画を描いたんですね」

 構図がそっくりの写真と絵の両方を見せてくれ、「わっ、ほんとだ。まさに」と私は跳び上がった。

◆大阪市中央区南久宝寺町4-3-9 丸盛ビル1階/℡06-6241-0903/大阪メトロ御堂筋線・中央線本町駅13番出口から徒歩3分/正午~午後7時、日・月・祝日は午後1~7時、水曜休み

ウチの推し本

「ROME」WILLIAM KLEIN著 Editions du Seuil刊 古本売価 3万5200円

「代表作『New York』に続く、クラインの2作目の写真集。1950年代後半にフェリーニの映画アシスタントをしながらローマで撮った市井の人々、子ども、カトリック風俗などが収められています。ブレを“味”として取り込んだ革新性が特徴で、森山大道らにも大きな影響を与えたんです。うちではほぼ常備。高価なのに、なんとなく売れていきますね。在庫分は、1959年版でかなり希少です」

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