格差拡大の時代…再び「富裕税」が求められる 「税の日本史」諸富徹著/祥伝社新書(選者:佐藤優)

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「税の日本史」諸富徹著/祥伝社新書

 古代から現代までの日本の税の歴史をわかりやすくまとめた好著だ。現下、日本の経済政策の基調は自助努力を慫慂する新自由主義だ。その結果、格差が拡大している。

<格差が拡大する時代には、人々の不満が高まる結果、異議申し立ての力が強まり、既成政党が力を失うと同時に、排外主義的な傾向が強まります。これは、戦間期の日本が経験してきた通りです。私たちは今、それがアメリカやヨーロッパで起きていることを目の当たりにしています>

 さらに言うと、格差の拡大で世界的規模で富裕層と、その他の人々の一体感が失われ国民意識が弱体化している。この傾向が続くと国家が弱くなる。

 日本では高齢化が進んでいる。その結果、社会保障費は今後も増えていく。

<ますます増加する社会保障費をどのように賄うのか。これは、今後の日本で大きな問題となるでしょう。それを逆進的な形ではなく、応能的な形で賄うべきというのが歴史の教訓です。/国際的には、消費税や社会保険料(事実上の賃金課税)のような逆進的な税・保険料収入に依存するのではなく、金融所得や資産に着目した、より応能的な負担に切り替えていく動きがあります。そうしたなかで今、再び富裕税にも光が当てられています>

 評者も諸富氏の提案を支持する。具体的には、所得税を引き下げて資産
課税という形で富裕税を導入することになると思う。もちろん富裕層は抵抗する。この層は政治エリート、マスメディアにも影響力を行使することができるので、実現は難しい。

 しかし、格差の拡大を放置しておくと、富裕層とそれ以外の人々の間で、食べ物、住宅、衣服、教育、趣味などが異なってくるようになる。単一の日本文化が崩れてしまい「金持ちの日本人」と「金持ちでない日本人」の間で、同じ国民であるという意識が薄れてしまう。その結果、国家が弱体化する。弱い国家は富裕層の利益を守ることができなくなる。

 極端な例をあげれば、強力な隣国が弱くなった日本を軍事侵攻すれば、富裕層も財産を没収されてしまう。富裕税を導入し、日本の社会と国家を強化することが、富裕層の利益にもつながるのだ。 ★★★

 (2026年5月28日脱稿)

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