6月の歌舞伎座は「錦之介特別興行」が復活したかのような座組

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 ストーリーは、あまりに偶然の出会いが多いので、冷静に考えるとツッコミどころ満載なのだが、冷静に見ていられない。松也と勘九郎、そして七之助の入魂の演技で、南北の世界に引き込まれた。

 昼の部の話題作は中村獅童主演の「子連れ狼」。錦之介主演のテレビ映画での音楽が使われ、「しとしとぴっちゃん」の歌も流れる。演出は映画監督の井上昌典で、大道具や照明は、なるほど映像的だ。

 井上によると、「歌舞伎に寄せていくことは考えていない」と獅童が言うので引き受けたという。その意図通り、歌舞伎には見えない。だが歌舞伎ではないものを歌舞伎座で上演する意図が分からない。

 勘九郎や松也、七之助、米吉らが敵役や依頼人として登場するが、本来、主役の獅童を引き立てるはずの彼らのほうが、圧倒的な存在感を示す。獅童はセリフのない時、ただ立っているだけにしか見えない。

 昨年5月に始まった尾上菊五郎(八代目)と菊之助の襲名披露公演も、今月の博多座が大劇場では最後。歌舞伎座に役者を取られたのか予算の都合か、幹部役者は團十郎、雀右衛門、彌十郎しか出てなく、さみしい座組。演目も菊五郎が演じたのは「茨木」で老婆実は鬼神、「ぢいさんばあさん」では爺さんと、うまいのだけど地味なものばかり。派手さは客演の團十郎にまかせた感じ。最後は父子での「連獅子」で、華やかに終わったから、終わり良ければ全て良しではあるが。

(中川右介/作家)

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