小説家デビューの女優・山村紅葉さん 偉大なる母「サスペンスの女王」の娘に生まれたがゆえの苦悩

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山村紅葉(女優)

 女優・山村紅葉が小説家デビューした。6月17日に発売されたのは「祇園の秘密 血のすり替え」(双葉社)。65歳にして小説家デビューを思い立ったきっかけはもちろん、これまでの人生についても話を聞いた。

  ◇  ◇  ◇

 ──「小説家デビュー」の思いは以前からお持ちだったんでしょうか。

 65歳という年齢ありきではなかったんです。でも、5年ほど前に週刊誌での連載が終わった時に、ふと、母の山村美紗について、「フィクションだ」という前提で書いた方が面白い話がたくさんあることに気づいたんです。一言で言えば「小説・山村美紗」みたいな作品を書きたいという思いですかね。要は「エッセーはもう書き終えたから、次は、フィクションという自由さがある小説で、エッセーよりも核心に迫った何かを書いてみたい」という思いを抱いていました。そうこうしているうちに、去年、映画「国宝」を見たのが大きなきっかけになりました。

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 ──と、いいますと?

 原作小説を書かれた吉田修一さんは歌舞伎の黒子の経験があり、その経験が作品に生かされているそうですが、その話を聞いた時に自分のこれまでの人生で経験した「幼いころから自宅に歌舞伎役者が遊びに来ていた」という要素もまた、作品づくりに生かせるんじゃないかと気づいたんです。また、20歳の頃から母が祇園のお茶屋さんに連れて行ってくれたこともあり、舞妓さんの世界も比較的身近でした。これらが絡み合って、「『国宝』とは違うけど、自分も伝統芸能の世界についての小説が書けるんじゃないか?」という考えに至ったんです。そこにサスペンスの要素を盛り込み、「祇園の秘密 血のすり替え」を書き上げました。

■名門の家には名門の家なりの悩みがある

 ──小説では「名門に生まれたがゆえの苦悩」が描かれていますが、ご自身にも重なる点がありますか?

 小説では「名門の家には名門の家なりの悩みがある」という点を強調しました。ちなみにそれは、芸能界デビューが母のコネだった私にも言えることなんです。そうであるがゆえに、いまだに「紅葉さんて、絵に描いたような幸せな人生でしょうね」なんて言われることもありますが、「いや、実はそうでもないんだよ」という点が作品を通して伝わってくれれば、という思いはありますね。また、小説では歌舞伎役者と舞妓という性別が限定される職業のそれぞれの家庭に、「その性別の子供が生まれない」という苦悩が出発点となっています。そんなのっぴきならない状況を打開する方法として、「血のすり替え」が起こったとしたら……という発想に至ったことで、次々とアイデアが浮かんできたんです。

 ──大胆な発想です。

 そんな折、エッセーも担当してくれていた編集者さんに書籍化について相談している最中に小説の構想を話す機会がありました。そうしたら編集者さんから、「お母さまが筆をおかれた65歳に小説家デビューするのはいかがですか?」とお誘いをいただいたというのが、今回のきっかけです。

 ──「2時間サスペンスの女王」が小説を書いたということは……やはり映像化もありそうです。

 具体的な予定はないんですけど、密かな野望はあります。私は、やはり、ドラマに長年かかわってきたからなのか、ストーリーを文字ではなく映像で考える、つまり、映像が先で文字化が後なんです。だから、映像化はしやすいんじゃないかと。ちなみに、担当の編集者さんからは、「テンポはいいが、台本みたいな箇所がいくつもある」と言われました(笑)。

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