「たぶん、恋しい」一穂ミチ著
「たぶん、恋しい」一穂ミチ著
合コンで知り合った女性・マリが気になって、彼女の働くショップに客として訪ねた「僕」は、マリに会いたくてお店に行ったことが見破られたのをきっかけに彼女と付き合い始める。マリは飼い猫を優先した生活を送っていたため、お泊まりや夜遅くまでのデートはできなかったが、半年後、ついに彼女が家に誘ってくれる日が来た。ところが、彼女が紹介してくれた飼い猫には予想外の秘密があった……。(「エンパイアライン」)
2007年「雪よ林檎の香のごとく」でデビューし、22年「スモールワールズ」で吉川英治文学新人賞、24年には「光のとこにいてね」で島清恋愛文学賞と「ツミデミック」で直木賞を受賞した著者による短編小説集。冒頭の「エンパイアライン」のほか、口笛でしかコミュニケーションをとらなくなった認知症の大叔母を描いた「たぶんそんな感じ」など計6編を収録。目の前に存在しないものに心を奪われる気持ちやそれに対する恐れ、他人に理解されにくい本人にとっての切実な悩みやこだわりなど、簡単には表現できない心情を両手でそっとすくうような丁寧さで描いている。
(新潮社 1870円)



















