萩本欽一〈22〉伝説のコント「机」はたった10人の客から始まった「幕前、お金要らないからって」
作家・増田俊也氏による連載、各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。待望の第2弾は、「視聴率100%男」として昭和のテレビ界を席巻したコメディアンの萩本欽一氏です。
◇ ◇ ◇
増田「熱海の温泉街へ流れて、そこで湯に漬かりながら東京でのさまざまな疲れをとっていた」
萩本「そうです」
増田「そこで『机』という一人コントを思いついたんですね」
萩本「そう。半年ぐらいで『机』を思いついたんです。『よし。このネタ持って浅草に戻ろう』と思って帰ったの」
※机のコント:机の前で演説をする講師役の坂上二郎とそれにちょっかいを出しまくって邪魔をする書生役の萩本欽一がツッコミとボケを繰り返すコント。のちに役を入れ替え、体当たりあり、跳び蹴りあり、2人が舞台上を所狭しと走り回ってやり合う姿が大爆笑を生んだ。最後は演説をする萩本欽一の机の脚を坂上二郎がのこぎりでどんどんと切っていき、駅弁売り状態となってしまう。
増田「それで浅草の3畳間に戻ったら、下から『欽ちゃん電話よ』って豆腐屋の奥さんに呼ばれて」
萩本「電話出たら二郎さん。『遊びに来ない?』って言うんで会ったんです」
増田「それで『コンビ組もうよ』って話に?」
萩本「いやいや。俺はコンビは組みたくない」
増田「仲が悪かったから」
萩本「はい、そうです」
増田「当時は二郎さんにあまりいい印象は持ってない」
萩本「うん。会ったら二郎さんが『欽ちゃん、これから何すんの?』って言うから、机のコントを思いついたんで、それをやりに帰ってきたのって言ったら、『机のどういう話?』って聞くの。説明したら『それ、おかしいじゃん。面白いじゃん』て言うのよ。『でも、自分で机の脚を切って自分でひっくり返るってウケないよそれ。誰かに切られたからひっくり返んじゃないの?』って言うの」
増田「たしかにそうですね」
萩本「うん。それはそうだねって思って、『じゃあ二郎さん、やってくれる?』って聞いたら『うん、いいよ』って。でも、コンビを組まないからね。だからコンビ名はなし」
増田「なるほど」
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