著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』抽象的な心象風景をポップ&アートに昇華させた最高傑作曲

公開日: 更新日:

アルバム『マジカル・ミステリー・ツアー』(1967年11月27日)②

■『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』①

 こういうことは、はっきりと書いておいた方がいいと思う。

 この曲こそが「ビートルズの最高傑作曲」であると。

↓………ここから続き………

 並び立つのは、すでに紹介した『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』(67年)だ。ただしあの曲は、最も特殊なアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のもっとも特殊な曲、いわばビートルズ全曲の中の「特区」にあるのに対し、この曲はシングルカットされただけあって、かなり「本丸」な位置にある。そんな意味合いも含め「最高傑作曲」の称号を臆せず差し出したい。


 強く推す理由として、少々手垢にまみれた言葉を使えば「ポップとアートの融合」。

 世界一の人気バンドのシングルとして、世界中の若者の口の端に上ったという意味での「ポップ性」と、次回取り上げる、非常に複雑なサウンド作りと、ジョンの精神世界が広がる歌詞が融合した結果としての「アート性」が、見事に両立している。

 注目したいのは、この曲と両A面シングルとなったポールによる『ペニー・レイン』との関係だ。

 まず共通点として、両曲とも、歌詞は彼らの故郷リバプールを舞台としている。そういう意味で、このシングルは「コンセプトシングル」なのである。

 しかし『ペニー・レイン』が故郷の風景を、かなり具体的に描いているのに対し、ジョンは、思い出の孤児院「ストロベリー・フィールド」を舞台として、抽象的な心象風景……精神世界、アートな世界を自由に広げている。

 結果、人々の口の端をするすると上る、人懐っこいメロディーが醸し出す「ポップ性」と、『ペニー・レイン』を超える「アート性」が、ぐぐっとせり出し、「ビートルズの最高傑作曲」として君臨するのだ。

 あらためて聴いてみる。初めて聴いてから40年以上経つけれども、初めて聴いたときに心に広がった、あの不思議感覚=センス・オブ・ワンダーが、今聴いても心に去来する。

 つまりは劇的な傑作であり、また、その無限の傑作性は、妙な言い方になるが、少々恐ろしいほどだ。

 この『ストロベリー・フィールズ~』の「ポップ×アート性」は『イエスタデイ』(65年)、『ヘイ・ジュード』(68年)、『レット・イット・ビー』(70年)など、彼らの有名曲の追随を許さない唯一のものだと思う。

 だからこの曲は、私の心の中で、永遠な輝きを放ち続ける。「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー・フォーエバー」なのだ。

■「日本の新しい音楽1975~ "New Music" from 1975」発売!
 スージー鈴木氏の大好評連載が書籍化されました!Amazonでも好評発売中です!

■好評連載「沢田研二の音楽1980-1985」をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」(日刊現代/講談社)発売中!

【連載】スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    女性を巡る愛憎より友情が勝った永遠のバディー

  2. 2

    萩本欽一〈27〉坂上二郎さんは一番特別な人。あのボケは誰にもできないよ

  3. 3

    かつての「打率4割男」は期待外れで戦力外…西武・林安可は母国・台湾野手の低評価を覆せるか

  4. 4

    佐々木朗希と山本由伸は“抱き合わせ”だったのか…ドジャース入りの裏で「謎の日本人」が暗躍

  5. 5

    48年ぶり映画出演の由美かおるさんが語る 人生が変わった瞬間「11PM」「水戸黄門」エピソード

  1. 6

    佐々木麟太郎に「個別育成プログラム」…マーリンズ入りには低予算球団ならではの“うまみ”あり

  2. 7

    佐藤二朗の地上波ドラマはしばらく厳しいが…橋本愛の事態はもっと深刻

  3. 8

    佐藤二朗vs橋本愛ハラスメント騒動は「文春嫌い」「フジテレビ嫌い」「共産党嫌い」が絡み合うカオスに

  4. 9

    (3)「森保監督は『指揮官に必要な冷徹さ』を確固たる信念として持っています」

  5. 10

    小栗旬がハリウッド“資本”映画で主演も… トラウマ級の英語力と「スター」への高い壁