(35)サ高住への入居を拒否する母を説得できるのは誰なのか
説得はうまくいくのだろうか。兄とふたり、少し離れた場所で固唾をのんで見守ること約30分。車のドアが開き、サ高住責任者が出てきた。浮かない顔をしていた。
「ごめんなさい、ダメでした」
やっぱりそうか……。でも、このままで根比べしているわけにもいかない。3人で話し合った結果、兄を入居手続きのためサ高住に残し、自分がおかんを自宅に連れていき、落ち着かせてから再度説得することにした。そうでもしないと何も進みそうになかったからだ。
自宅までの車中、おかんは「本当に家に行ってくれるのね?」と何度も確認してきた。こちらはすでに疲れ切っていたので「そうだよ」とぶっきらぼうな返事をするのが精いっぱい。そして到着した自宅。
おかんは一刻も早く中に入りたいと、ひとりで車の外に出ようとする。それはいくらなんでも危険すぎる。急ぎ介助に向かうと「大丈夫、ひとりでできる!」と、はねのけようとする。「また転んだら病院に逆戻りだろ!」。無理やり体を支えて誘導した。
でも、介助はここまで。「そんなに言うならひとりでやってみなよ」。玄関に入ったところで意地悪く告げると、靴を脱ぐだけで四苦八苦。その姿を見ていたら悲しくなってしまい、手を貸すと今度は素直に受け入れてくれた。


















