一色さゆり(作家)書店とのご縁から広がる読書体験
5月×日 自身の新刊「モナリザの裏側」(新潮社 2145円)の発売に合わせ、地元・静岡県内の書店を巡る。書店員さんにはお忙しいなかご対応いただき、素晴らしい一日になった。本作は西洋美術を題材にした短編集で、人間ドラマに重きを置きながら仕上げた。静岡が舞台として登場する1編も含まれる。多くの方に届くことを願う。
6月×日 静岡市内の書店、ヒガクレ荘で一日書店員を務め、新刊のサイン会をする。集客を心配したが、ひっきりなしの来客で楽しい時間になった。ヒガクレ荘は細い通路の奥の奥に潜む、小ぢんまりした隠れ家的なところ。そこで一日書店員になれた幸せ、常連さんや読者のみなさんと交流できた幸せ。店主の小島さんからおすすめされた島田潤一郎著「古くてあたらしい仕事」(新潮社 2200円)は、夏葉社という一人出版社をはじめるに至った経緯を、謙虚かつ誠実な語り口でつづる1冊で、今読めて良かった。
7月×日 江戸時代からつづく老舗、吉見書店の歴史について吉見佳奈子専務のトークショーを聞きに行く。代々の店主が文化人や政治家と交流してきた足跡が、発見された興味深い古文書から窺い知れる。最近、私はなるべく本を書店で買うようにしているが、吉見書店はSNSで注文するとすぐ在庫を確認してくださる。吉見家とも所縁ある文化人を紹介した小林ふみ子著「大田南畝 江戸に狂歌の花咲かす」(KADOKAWA 1386円)は、ナンセンスな笑いの元祖とも言える狂歌の成り立ちや魅力をわかりやすく伝える手引書だった。
7月×日 浜北でシソンヌのお笑い単独ライブを見にいく前に、かの名店、掛川市の高久書店に伺う。襟を正して入店すると、店主の高木さんの穏やかな話し声が。私の顔も憶えてくださっていて感無量。おすすめされた話題本、繁延あづさ著「鶏まみれ」(亜紀書房 2420円)は、働くこと食べること生きることについて胸倉を掴まれるような力強さで訴えかける、食鳥処理場で働きはじめた作者のルポ。職場の人々へのまなざしは人情味あふれる。身近なのに知られていない重要な事実を書くこと、それは私の目標でもあると再確認した。



















