岡部まりさんは専門美術館の理事に「江戸期に始まり今も作られている『根付け』を広めたい」
6000点のコレクション。「ライバルはミケランジェロ」というトップの根付師も
及川空観という、ライバルはミケランジェロなんて言われている根付作家のトップの方がいます。例えば、コロナの時の作品。空間の奥に熱を出して唸っている死神がいて、妖怪が死に神に注射を打っていて、クスッと笑いますが、これなども現代の人しか作れない根付けです。一方、心中ものの根付けもあって、その男女が雪の中をほっかむりして手を温め合いながら歩いているところが表現されています。しかし、360度見ることができる根付けでは足の裏も見えるわけです。その作家さんはあらゆるところを絡ませるのが巧みで、本当に寄り添っているだけでなく、彼らが逃げ惑っている様子やその心情までうかがえます。
根付けの小さな世界にそんな悲しさや面白さが描かれていて、しかも美しい。それがすべて作家の一点物って、すごくないですか。
木下館長は45年以上もご夫婦で根付けをコレクションされて、根付館の常設展示は400点、館長のコレクションは現在6000点にまで増えました。
毎年、美術館が主催の「ザ・ゴールデン根付アワード」という表彰式を開催して、優秀な作品を彫られた作家さんを称えています。日本で根付けといえば、高円宮様ですが、憲仁親王殿下がお隠れになられた後も、久子妃殿下がその思いを継承されて、毎年、贈賞式にご臨席いただいています。
伝統芸術の粋、匠が凝縮された根付けは日本人には忘れられた文化かもしれませんが、実は海外、特に欧米の方に大変評価が高く、コレクターも多いんです。久子さまは根付けを「小さな日本の親善大使」というふうにすてきに表現されています。
江戸期に始まり、それが現代に蘇ってもうひと花咲いた根付けの文化が現代の日本人にこれから愛されていく可能性もあります。仮にそれがほそぼそとしたものでも、この手のひらの芸術を広めていきたい。私は根付館の理事として、ひたすらそのもったいないほどの隠れた魅力を情報発信しています。
昨年には清宗根付館の姉妹館として京都・北白川に清宗記念館が開館しました。18年に70歳で亡くなった日本画家、鹿見喜陌の作品を所蔵する美術館としてオープンしたのですが、ここでは臨済宗の中興の祖といわれる白隠禅師が書き残した書画も120点所蔵しています。白隠禅師はだるまの絵で有名な禅僧です。
■スタジオジブリともうれしいご縁
スタジオジブリの鈴木敏夫さんは禅の世界に精通していらっしゃるようです。ジブリの理念と禅の世界は共通しているところも感じますね。今回、私どもはうれしいご縁をいただきました。スタジオジブリが今年12月に京セラ美術館で「白隠さんの禅」という展覧会を開催されますが、そのキービジュアルは姉妹館で所蔵している「蓮池観音」という白隠の書です。その素晴らしい書画がポスターになって発信されています。私とスタッフは今、これに全力を注いでいます。
(聞き手=峯田淳)
▽岡部まり(おかべ・まり)長崎県出身。「探偵!ナイトスクープ」(朝日放送)の2代目秘書として人気に。現在、公益財団法人「京都 清宗根付館」理事。



















