荒木経惟
著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<52>自分好みの花にしたかったというかね。花を淫してるんだね

公開日: 更新日:

女陰より花陰のほうが、ずっとそそるね

 リングストロボと接写レンズで撮った『エロトス』(1993年刊写真集)の話をしたけど(連載50・51)、これは80年代にリングストロボで撮った花の写真だね。

 モノクロでは女陰、カラーでは花、相手が花でも近づけるところまで近づいて撮る。これはカトレアだよ(①)。きれいだねぇ、ここまでくると女陰より花陰のほうが、ずっとそそるね。

 この写真、人気で、世界中の展覧会や写真集にもよく使われるんだ。

 これはね、“花の処女喪失”って言ってたんだよ(②)。

 この花は処女だったんだけど、ちょっとおイタしたら花陰から血が出てきちゃったってね。種明かしすると、真っ白な花の花芯だけを赤のリキテックス(絵具)かなにかで、パッと染めたんだよ。自分の花をつくりたかったというか、自分好みの花にしたかったというかね。花を淫してるんだね。

 これは、シャクヤク(③)。大好きな花なんだ。つぼみがギュッと堅くしまってて、こじあけたい、開花させたいっていう気分にさせるんだ。

 花の写真を、ずっと撮り続けている。

 オレの花の写真の始まりは、家の墓がある三ノ輪(台東区)の実家近くの浄閑寺で撮った「彼岸花」(1967年~73年撮影、連載27に掲載)。投げ込み寺で有名で、オレの子どものときの遊び場だったんだ。墓守と仲がよかったから、彼岸の後の枯れかかった花を「片付けないでくれ」って話をつけて、白いボードを持って行って、墓の前に立てかけて撮ったんだ。白バックにして、枯れかけの彼岸花を撮りまくった。

 やりだすと全部撮らなきゃ終わらなくてね。日が落ちるまで、もう夢中で撮り続けたんだ。なんかこう、魅かれちゃうんだよね。今も変わらないよ、同じだね(笑)。

(構成=内田真由美)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    悠仁さまは推薦入学で東大を目指すも…名門・筑波大付属高校が持つ「4人」の枠に入れるのか?

    悠仁さまは推薦入学で東大を目指すも…名門・筑波大付属高校が持つ「4人」の枠に入れるのか?

  2. 2
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  4. 4
    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

  5. 5
    どちらが“将来の天皇”の注目度 愛子さまは園遊会で猫談義、悠仁さまは玉川大訪問が話題に

    どちらが“将来の天皇”の注目度 愛子さまは園遊会で猫談義、悠仁さまは玉川大訪問が話題に

  1. 6
    「アンメット」の“三瓶先生”にハマる視聴者続出!杉咲花も惚れた若葉竜也「無愛想な魅力」の原点

    「アンメット」の“三瓶先生”にハマる視聴者続出!杉咲花も惚れた若葉竜也「無愛想な魅力」の原点

  2. 7
    阪神・岡田監督が密かに温めていた「藤浪獲得プラン」が消滅していた…

    阪神・岡田監督が密かに温めていた「藤浪獲得プラン」が消滅していた…

  3. 8
    阪神・大山悠輔「4年16億円」争奪戦勃発に現実味…評価を押し上げた「目に見える数字」以上の価値

    阪神・大山悠輔「4年16億円」争奪戦勃発に現実味…評価を押し上げた「目に見える数字」以上の価値

  4. 9
    小池都知事の公約「築地は守る」どこへ? 食のテーマパーク機能を有する市場のはずが“多目的スタジアム”に巨人が移転?

    小池都知事の公約「築地は守る」どこへ? 食のテーマパーク機能を有する市場のはずが“多目的スタジアム”に巨人が移転?

  5. 10
    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽