荒木経惟
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荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<48>パリの個展が大盛況 たけしさんは“俗”を持っているからいいんだよ

公開日: 更新日:

ビートたけしさん(2)

 ロンドンの美術館で展覧会をやったときに(2005年バービカン・アート・ギャラリーで大回顧展を開催)、隣の映画館でオレの選んだ映画も上映したんだよ。小津(安二郎監督)の『東京物語』を上映した後の舞台挨拶で、最初に、「私は北野武ではありません!」って言ったら、大爆笑でウケたね~(笑)。

 たけしさんの個展ね、新宿でやった展覧会を見に行ったよ。パリのカルティエ(財団現代美術館)でやった展覧会だよね。オレもカルティエで個展をやってるんだ。たけしさんの作った作品、いいんだよ。見てると、みんな愛おしくなるんだ。(荒木は1995年にフランスでの初個展をカルティエで開催。ビートたけしは2010年にカルティエで6カ月にわたる個展を開催し大反響を巻き起こした。日本外線店となる個展「BEAO絵描き小僧展」〔東京オペラシティアートギャラリー〕を2012年に開催)

■似てるんだよね。純粋な芸術じゃなくて、ちょっと不純っていうか、非純っていうか…

 彼は照れ屋だから、今やっていることを自分からあまり言わないよね。アートって言っても、オレは「芸術」と「芸能」っていうのが半々じゃなきゃいけないっていう気分があるんだけど、似てるんだよね。芸術、芸術って言っても、純粋な芸術じゃなくて、ちょっと不純っていうか、非純っていうか、そういうのが混ざらないと。

現代美術と称してエラぶっているだけじゃだめなんだよ

 風と俗、風俗ね。“風俗”といってもね、性と俗が一緒にあるという、性と俗をまぜこぜにするということなんだよ。今の現代アーティストとか、普通のヤツもそうだけど、“風”だけにするのがアートとか、それが品がいいことだと思っている。でもね、人間ということの、人間の動物性というかさ、動物を忘れている。要するに、風になる、俗から逃げてね。“俗”をなしにするのが芸術だと思っているわけ。だから、まがいものが多いんだよ。現代アートっていうのは。つまんないのが多いよね。わからないからつまらないんじゃなくて、つまらないんだもん。今のアートじゃないけど、現代美術と称してエラぶっているだけじゃだめなんだよ。おもしろくないよね。たけしさんは、“俗”を持っているから、いいんだよ。

 今、病院に行ってるだろ。いい薬には毒が入っていなくちゃいけないっていう感じなんだよ。それをより良いものにできるか、毒にいっちゃうかというのは、その人のコトなんだからさ。でもね、すべてに、“俗”があるんだから。俗世間と言うじゃない。すべてに“俗”があるんだよ、生きることに。

 (構成=内田真由美)

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